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第3話 春 -3-
「アッサリした甘さで結構好きかも」
「桜味か~。いかにも春っぽいな」
桜の花びらの形をした上には薄紅色のチョコレート。
季節物の菓子は何だか特別な気分になりやすい。
漠然とだが、お花見に行きたくなった……。
包装の上から花びら型のクッキーを裏表にヒラヒラみていたら、壱弥が口を開いた。
「―……お花見、行きたい……かも?」
「……壱弥も!?」
「あ……。ああ、行きたいな」
すげ! 一緒!!
俺の声量と食いつき具合に一瞬驚いたみたいだけど、壱弥は直ぐに安堵した表情で俺に頷いてきた。
俺、勢い良すぎて驚かせちまったかな?
だって同じだったからさ、壱弥の言葉に俺ってば入れ食い状態で直ぐに飛びついちまった。
「じゃぁさ、じゃぁさ、帰りにあの公園に寄ろう!」
「ああ、あそこのデカイ公園な。桜が有名だったな……」
「そうそう! 近場だと案外行かないよなぁ~。俺、実は行くの初めてかも」
「そっか……。そうだな、俺もその公園、初めて」
突然のお花見計画に、壱弥も楽しみで興奮してるのかな? 少し頬が赤い。
しかもお互い初めて! 地元なのになぁ~。むしろ、地元だから?
近い方が遠い方より鈍いってやつ?
あ……どうしよう!? オヤツいる? どこかのコンビニかファストフード寄るか……。
「くぁ~テンション上がる! そうだ! ドーナッツ買ってこう~。俺ね、苺のヤツにする! ……後は何だ?」
「食うのか?」
「食う! 飲む! 愛でる!」
指を三本出して、ニカリ笑顔で答える。
「壱弥と一緒に初めての公園で花見、楽しみ!」
「……っ!」
そうそう、部活動参加が自由な我が高校。
俺と壱弥はどこの部活にも所属していない、しょせん帰宅部だ。
一年でこんな感じだし、このまま卒業まで帰宅部と思われる。
だから放課後の時間をこうした事に使えるのだ! ヌフー!!
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