6 / 28
第6話 春 -6-
「……しょ、しょぉがねぇえなぁ。俺が選んだのは美味いから、心して食え!」
「おう」
そして渡された壱弥のドーナッツ。チョコとシュガータイプ。
「…………」
「食わんの?」
「……食うよ」
―……割られてた。
壱弥さんのドーナッツは、"齧る"じゃなく、"割られて"た。両方、割られてた。
壱弥さんに女子力を感じた。
俺? 俺は一つは齧って、もう一つは割った。
だって、気にせず食べてたし。そんな途中の提案だし。
壱弥はそんな俺の齧ったドーナッツを「確かに美味いな」とか言いながらフツーに食べてるし?
キイィィイイ! 何だか悔しい……!!
……あれ? でも、ある意味逆パターン? ふぉ!! 急に恥ずかしくなってきた!
さ、桜! 桜を愛でよう!! 本来の目的だし!
「……ぃ、壱弥のも美味いな」
「おおー、そいつは良かった」
「桜、咲いてるうちに見れて嬉しい」
「だな。間に合った」
ともだちにシェアしよう!