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第12話 夏 -5-
ふっふっふー! こういうのは得意なんだぜ?
兄貴のサバゲで使うエアガンとか、たまにいじらせてもらってんだ。
それと同じだ、多分。的は止まっているし、空き缶を撃つ要領だ。
ブレなきゃ大丈夫。
―……トス、ン!
「……ッしゃぁ! 射止めたぜ!!」
楽勝、楽勝、マジで楽勝!
あまりの楽勝さに思わず……
「それにしても、本当にこれが特賞~? ちっちゃいクマのぬいぐるみじゃん? ま、落としたけど」
「ふ……坊主、それはしょせん"的役"だ。こっちが実際の景品だ!!」
「へ!???」
そして射的の親父が屋台の裏から出してきたのは、大人の男が抱えるくらいデカイくまのぬいぐるみだった……。
「置いてる見た目のショボサが怪しいのか、あんま落とされないんだよな。ポコッと"良い所"を押せば案外すぐ落ちるのになぁ? はッはッは!」
そう言って店の親父さんは俺が落とした人形を、そのまま元の位置に戻した。……使いまわすのか。ってか、数体用意してんのか? これ級なのを?
特賞としてあと、猫、ウサギ、犬、河童……。河童?
でもさ、この特賞クマ……
「両手で抱えないと持てない……」
でけぇ……。
あ! 俺は平均的な成長具合だからな? 所詮、フツメンっすわ。
まぁ、壱弥の方が背が高いし、身体つきもモデルっぽいイケメンだけどさー。
でも、これを抱えると……
「丸ごとイイダコ入り特大たこ焼きが、たーべーたーいー!!! タコタコタコタコタコタコタコタコタコタコタコ……」
「わ~~~ッた! 三葵、俺が食わせてやるから叫ぶな! ハズイ!」
そうなんだよ! 何も出来ないんだよ!!
そして進んだ先には『丸ごとイイダコ入り特大たこ焼き』が……。
気になる! 食べたい! 捕獲! そんな子供全開な俺に壱弥が合わせてくれたー! さすがイケメンだー!
わーいわーい! 壱弥さんきゅー! これは言えないけど、大好きだー!! 俺と付き合って!
あ、そうそう、金は後で払うから、宜しく~。
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