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第13話
俺は何故か分からなかったが、カウターの席に座った。マスターに惹かれたのだろう…。
普段ならば他人に興味なんて湧かないのになぁ
この人の側はなんだか居心地が良さそうだと、思ってしまった…。注文を聞かれたから、俺はココアを頼んだ。甘いものは嫌なことを忘れさせてくれるから好きだ。
しばらく待っていると、暖かいココアが目の前に置かれた。冷たい方が良かったと思いながら飲む。暖かいココアは、冷たくなっていた心を溶かしていくように身体に染みていく……。
人生の中で一番甘かった……
「ねぇ、マスターの名前なに?」
「私ですか?春風 林太郎です」
春風 林太郎 (はるかぜ りんたろう) …珍しいな。そう思った。俺もちゃんと名乗った方が良いよな…。というか、先に名乗るべきだったな。
「俺、涼音。森野涼音。涼(りょう)って呼んで」
「分かりました。私のことは、好きに呼んで下さいね。常連さんや友達は皆んな"林ちゃん"と呼びますが…。あの、ところで…、涼くん…。その傷、痛そうですね。手当てさせて貰ってもいいですか?」
「こんなの、ほかっとけば治る…。だから、ほかっておけばい…。どうせ誰も心配しない」
そういえば、春風さんは悲しそうな顔をした…そんな風に見えたのは無理したせいで上がった熱のせいで視界が歪んだせいだろうか……。
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