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調教

その日からアルはハヤテの体が自分を受け入れる為の調教を日課とした。 ハヤテはアルに対して「食べられるかもしれない」と怯える事は無くなったが、淫らな真似をされる事を恐れた。正確には淫らな真似をされて快楽を感じる己の肉体の変化に怯えていた。 「これっ……抜いてぇ……うう!」 この日は革製のベルト付きのディルドを挿入したままベルトで固定されて、一日過ごすよう強要されていた。 ハヤテは涙目で震えていたが、アルに「慣れろ」と言われ、唇を噛み締めて耐えた。   この獣人は自分をおもちゃにして遊んでいるのだ。悔しくて、怖くて、けれど気持ちがいい。未熟な少年の体は快楽には素直すぎるほど素直だった。 アルはソファに座って本を読んでいた。ハヤテの頭を膝に乗せて、黒髪を指先に絡めて撫でた。ハヤテは胎内の異物にじっと耐えていた。 しばらくして、ハヤテが切羽詰まった声音で言った。 「ト、トイレ行きたい……っ」 アルはハヤテを抱き上げてトイレに行き、便座の前で下ろした。 「いいぞ。さっさと済ませろ」 「……っ」 「どうした?」 ハヤテはもじもじと身をよじっている。アルは不思議そうに聞いた。 「これ、抜いて……」 真っ赤になってうつむき、ハヤテは蚊の鳴くような声で頼んだ。 「ああ。そっちか」 アルは拘束ベルトを外して、ゆっくりとディルドを抜いた。 「うぅッ……う」 ガクガクと膝を震わせて崩れ落ちそうなハヤテをアルは腰を抱いて支えた。 「でていって……」 泣きそうな声を聞いて、アルの中に意地悪な気持ちと好奇心が首をもたげた。 「気にするな。そのまましてみせろ」 「なっ!? 嫌だ! 出てけよッ!」 ハヤテは叫んで嫌がったが、アルは強引に便座に座らせた。獣人用なので、体の小さなハヤテは足が浮いてしまう。 「な、何考えてんだよ!? 出てけ! 出て行って……あ!」 アルを押し返そうとするハヤテの華奢な両手をひとまとめに掴んで頭上に上げさせた。もう一方の手で優しく腹を撫でてやった。 「……我慢は体に悪いぞ。ほら」 「やめっ……離せ!……やぁ! ひ、うぅっ……っ」 ハヤテは脂汗をかいて小さく抵抗していたが、やがて震えながら泣きだした。俯いて蚊の鳴くような声で哀願した。 「ひ……っく……お、お願い……出て行って。お願い、お願いだから、ひとりにしてくださ……ううっ」 アルはしおらしくねだるハヤテを食い入るように見つめた。変な趣味は無いのだが、泣きじゃくる少年に激しくそそられた。 腹を撫でていた手で、ハヤテの顎を掴んで顔を上げさせた。 「や! 見んな!……やめてぇ……ううッ…お願…だか……ッ!……出てってよぉ」 ハヤテはボロボロと涙を流して限界まで耐えていたが…… 「ぃや……お願いあっち行って……見ないで……ううっ!」 泣き顔を晒して、アルの目の前で我慢しきれずに排泄をした。 放心状態になったハヤテをアルは抱き上げて、そのまま風呂に連れて入った。尻を洗い、ハヤテを抱いて湯船に浸かる。ハヤテはすっかり大人しくなっていた。あまりに大人しいので、アルは少々焦りを感じていた。 ───少し虐めすぎたか? 「そう落ち込むな。誰でもクソはする」 「……」 「ちょっと見てみたかったんだ。そんな小さい尻できちんとできるのかと」 「……」 「気にするな。お前の尻はもう何度も見ている」 「……」 「おい。何か言え」 「……最低」 ハヤテは振り返り、背後のアルを涙目で睨みつけた。 「最低だ!! 悪趣味! 変態! 野蛮人ッ!!」 「お、おい」 ハヤテは叫びながら小さな拳でアルの逞しい胸板を叩いた。アルは少し驚いてされるがままになっていた。 「あ、あんな……あんなとこ見て、何が楽しいんだよ! あんた、頭がおかしいんじゃないか!?」 排泄行為を見られたことで、まるで頭のネジが飛んでいってしまったかのように、ハヤテは怯えも恐れもなくアルの胸を何度も叩いた。 赤子のような力で痛くもかゆくもないが、急に怒り出したハヤテにアルはきょとんとしてしまっていた。 「毎日毎日ひとのケツいじりやがって! 死ね! 変態!」 真っ赤になって怒るハヤテに、アルは声を出して笑い出した。 「わっ、笑うな!」 「フッ、ハハッ……悪い。そう怒るな」 「笑うな! 笑うな!……あっ!」 アルはハヤテの暴れる体をぎゅっと抱きしめた。 「離せよ!」 「もうしない」 「……」 もがいても逃げられないので、ハヤテは大人しくなってアルを上目使いの涙目で睨んだ。 その顔が可愛いとアルは思った。それに、怯えずにキャンキャンと子犬のように吠えるハヤテに気を良くしていた。 「……ほんとに?」 「ああ」 「お尻に……もういれない?」 「尻には挿れるぞ」 「なんでだよ?! それも止めろよ! この野蛮人ッ!」 ハヤテは悔しいやら恥ずかしいやらで、めちゃくちゃにわめいてアルを叩いたが、アルは何故か嬉しそうな顔をしていた。ハヤテは少し落ち着いてきて、不審げにアルの顔を見た。 「アルだ。アルと呼べ。いい加減、野蛮人と呼ぶのは止めろ」 「野蛮じゃないか」 「ハハッ。そうかもしれんな。少し気を付ける。だから、アルと呼んでみろ」 ハヤテはいつのまにかアルの腿に跨がって、まるでじゃれあうようにしているのに気付いた。バツが悪く感じてぷいと顔を反らせたが、何故かアルの機嫌はいいようだし、試しに言ってみた。 「……アル。気を付けるっていうなら、服を返して。首輪も外せよ」 ハヤテの口から初めて自分の名を呼ばれ、アルの胸が疼いた。 「お前の服は店の者が処分したようだ。新しいのを用意させよう。首輪は駄目だ。ここでは首輪はお前にとって身分証変わりだからな」 「……わかった」 素直に返事をしたハヤテの頬をアルはペロリと舐めた。 風呂から上がったハヤテはアルのシャツを着せられた。アイボリーの綿のシャツはハヤテには大きく、腰に金の刺繍入りのサシェを締めると膝丈のワンピースのようだった。 人間サイズの服など無い。特注で作らせないといけないと思い、召使いにハヤテの体のサイズを測らせた。 召使いはアルに忠実だが、ここ数日の様子に驚いていた。ひどい扱いをするのかと思えば、一緒に食事をして風呂に入ったり、愛玩具として調教を始めたかと思えば、自分達と同じように服を着せた。 我が主人はどうしてしまったのだろうか?   休戦状態で暇なのだろうが、この少年をいったいどうするつもりなのだろう。召使いは疑問に思いながらも、アルに命じられた通り少年の衣服の仕立ての依頼を出した。 ちょうど昼飯時だったので、いつものように昼食も一緒に食べた。アナルのディルドは抜いてもらえたので、ハヤテはリラックスして椅子に座った。久しぶりに服を着る事もできて安心していた。 「いただきます」 食事の前に両手を合わせたハヤテにアルは不思議そうに聞いた。 「いつもそう言うが何故だ?」 「えっと、命をいただくから」 「?」 「おばあちゃんが、他の生き物の命を食べる事で自分たちは生かされてるって。だから、命をいただくことに感謝して食べるようにって教えてくれたんだ」 アルはハヤテの言葉に軽い衝撃を受けた。 命に感謝する。そんな風に考えた事などなかった。 命とは奪うものだ。他者の命を奪うことで生きるものだと、幼い頃から叩き込まれた。 感謝するなど、そんな穏やかな考えなど初めて聞いた。 「……そうか」 それきり、ふたりは黙って食事をした。

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