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変化
その夜から、ふたりの空気が変わった。
アルはハヤテに服を着せ、夜明けを見てから食事をして昼寝をし、一日中一緒に過ごした。ハヤテもここでの生活に慣れたようで落ち着いていた。
「ありがとう。美味しかった。ごちそうさまでした」と、ハヤテは召使いに礼を言うようになった。
「いえいえ」召使いは照れたように茶色い尾を揺らした。
そんな風に日中は穏やかに過ごしていたが、夜になると……
「嫌だッ! それっ、やだったら!!」
毎晩、アルの寝室で尻を弄られた。どんなに暴れても、逃げようとしても、簡単にアルの逞しい腕に捕まり、アナルに卑猥な玩具を突っ込まれた。
「……ぅ…ひ、やっだ……っあ!……あ、あ、あ!」
ハヤテは伏せにされ、尻を高く上げた状態でヌチヌチとディルドを出し入れされていた。最初よりも太くて長い物だ。ハヤテは苦しげに、ハッハッと荒い呼吸を繰り返していた。
だが媚薬の効果もあり、前立腺を刺激されるとたまらず甘い悲鳴をあげた。
「あ! あぁああッ! いやぁあッ……それっ……ダメ! やめてぇ……あうううっ」
「気持ちがいいんだろう? そら。こうされると尻の孔がキュウキュウ締まるぞ」
「あっあっ……ひぅう!……も、やめてお願いぃ……あぁあ……」
ぬちゃぬちゃと粘着質な音が寝室に響いた。ハヤテの尻から潤滑油が滴り、濡れた雌孔のように雄を誘った。
───ああクソ。挿れたい。
アルはハヤテに挿れたくてたまらなかった。己のペニスで、この幼いが淫らで小さなアナルを突き上げて喘がせたい。思いきり犯して、中にブチまけて、この人間の少年を自分の精液まみれにしてしまいたい。
……だがまだ無理だ。
ハヤテは華奢で、アルとは体格が違いすぎる。今抱けば壊してしまうかもしれない。
ハヤテのアナルは順調に解れている。太いディルドを咥え込み、甘く鳴くようになった。
アルはぐっと欲望を抑え、ハヤテが自分とセックスできるようになる為の準備に集中した。
散々尻を弄られ、絶頂させられて、ハヤテはぐったりとベッドに沈んでいた。
アルは濡らしたタオルでハヤテの体を清めて、シーツを新しいものと変えてから再びハヤテを抱いてベッドに横たわる。
疲れ切っていたハヤテはアルの腕の中ですぐに眠りに落ちた。その寝息に誘われて、アルも目を閉じて眠りの世界へと旅立っていった。
朝食の時、ハヤテはいつも拗ねたようにアルに文句を垂れた。
「お尻が痛い」
「ここに座れ」
アルはハヤテをひょいと抱き上げて膝の上に乗せた。ハヤテは膝の上にちょこんと座って、ふくれっ面をしていた。
「お尻いじるのやめろよな」
「それは駄目だ。尻は弄る」
「変態」
「最近は気持ち良くなってきているじゃないか。昨夜だって……」
「黙れ! 毛むくじゃら」
召使いはそんなふたりのやりとりを最初はハラハラと見ていたが、今ではじゃれあっているだけだと分かった。
ハヤテはアルを「野蛮人」と呼ばなくなった。そのかわり「毛むくじゃら」「モフモフ野郎」と呼ぶようになった。
怒った時のその言い方が可愛くて、アルはハヤテを抱き上げて撫で回すのだ。アル・ハタル将軍のこんな姿など、誰も想像できないだろう。
「機嫌を直せ。今朝はお前の好きなリンゴのパイを作らせた。食べるだろう?」
「……食べる」
まるで恋人の機嫌をとる男のようだ。本人たちに自覚は無いようだが……
召使いはハヤテの好きなアップルパイを切り分けて皿に移した。アルはフォークですくい、ハヤテの口元に運ぶ。
「自分で食べれるから……」
「いいから、口を開けろ」
ハヤテは渋々と口を開ける。アルは自らの手でハヤテにパイを食べさせた。
リンゴの甘みにハヤテの頬が緩む。アルはその顔を満足気に見ていた。
そんなふたりの様子に召使いは邪魔にならないように、そっと下がっていった。
警備隊の者から報告書が届いたので、アルは書斎で目を通していた。街中も周辺の森も変わりは無い。獅子王の国もおかしな動きは無い。
報告書を仕舞って、アルはテラスに出た。クッションに埋もれるようにハヤテがうたた寝をしていた。アルは小さく笑って抱き上げようとして、ハヤテの膝の上の読みかけの本に目をやった。
人間が出てくる物語で、ちょうど挿し絵のページが開いていた。人間の家族のイラストだ。
───この絵を見ていたのか……
アルの心が少し曇った。ハヤテは狩人に捕まり、自分の意思とは関係無くオークションで売られた。
少し前のアルならば、人間を知能の低い種族だと思っていた。だが、ハヤテと話をして、今はそうではないと分かっている。優しさもプライドも文化も持っている。ペットとして飼われるなど耐えがたいだろう。
───帰りたいのだろうか?
アルの胸がチクリと痛んだ。最初は酷い扱いをしていた。今はアルもハヤテを尊重し、服や食事も自分と同じようにしている。(尻は弄っているのだが……)
ふと、ファイサル元将軍の事を思い出した。引退して弱ってしまった姿を見たくはなくて、一度も訪ねていない。ファイサルは人間と何年も暮らしていると聞く。
「……」
アルはハヤテを起こさないように抱き上げて、寝室のベッドに寝かせた。
そして、召使いに出かけてくると伝えて、数年振りにファイサル元将軍に会いに行く事にした。
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