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匂い

ハヤテはテオスに背を向けて走り出した。 「なになに? 鬼ごっこ?」  テオスはニヤニヤ顔のまま追いかけてきた。 「こっち来んなよ!」 リビングを出て廊下を走る。だがすぐに捕まった。大きな手で腰を抱き上げられて、両足が宙に浮いた。 「離せっ!! 野蛮人!」 「威勢がいいなぁ。けど、躾は不十分だね」 テオスはハヤテを小脇に抱えたまま空き部屋を探した。ハヤテは必死にもがくが、あまりに弱い力で無意味だった。 「お、ここでいいか」 「わっ!?」 適当な部屋に連れ込まれ、ポイッとベッドに放り投げられた。ハヤテは慌てて跳ね起きるが、すぐにテオスが覆いかぶさってきた。 「やだッ!! どけよ! 離せってば!!」 「大丈夫大丈夫。さすがに挿れたりしないから。ちょっとつまみ食いさせて。ファイサル元将軍もアルも人間を気に入ったし、ちょっと興味が湧いちゃって」 テオスはベロリと長い舌でハヤテの喉から頬にかけて舐め上げた。 「ひっ!」 ハヤテは嫌悪感に鳥肌を立てた。アルによって毎晩のように舐め回されることに慣れたはずのハヤテだったが、テオスに触れられる事には耐えられそうにない。 「嫌だぁッ!! やだやだ!」 「大人しくしろって」 アルとは違う。獣人などみな似たり寄ったりだと思っていたが、全然違った。 声も視線も、触れる毛皮の感触も。アルとは何もかも違った。 「あ、アルッ! アル! 助けてッ!!」 「うおッ!?」 ハヤテが叫んだ瞬間、テオスの体が後ろに吹っ飛んだ。派手な音を立てて壁にぶつかって落ちた。 「貴様! 何をしている!?」 アルがテオスを退け、ハヤテを守るように抱いた。 「ア、アル」 「いってぇ~……戻ったのか。おかえり」 アルは背後にハヤテを庇うようにして立ち、テオスに威嚇の唸り声を上げた。 長い付き合いだが、自分に対してアルがこんなにも怒りをぶつける事など初めてで、テオスは驚いていた。 「そう怒るなよ。ちょっとふざけただけだ」 「ハヤテに触るな!! 俺のだ!」 そう叫ぶアルの腰にハヤテがしがみついているのを見て、テオスは耳をペタンと倒し、苦笑いで立ち上がる。 「ごめんごめん。悪かった。俺は帰るから。おふたりさん、仲良くね」 ヒラヒラと手を振って部屋を出て行った。ドアのところで召使いが不安気にこちらを見て立っていたので「騒がせちゃってごめんね。邪魔者は退散だ」と、召使いを促してドアを閉めた。 ふたりきりになり、アルはハヤテの顔をそっと上げさせて心配そうに聞いた。 「大丈夫か? 何もされていないか?」 「……うん。大丈夫」 アルはハァ~ッと長いため息を吐いて、ハヤテの小さな体を抱きしめた。 さっきとは全然違う。アルの大きな体に包まれて、ハヤテは安心して力を抜いた。小さな手でアルの体にぎゅっとしがみついて、頭をすり寄せた。 大きくて、温かくて、とても安心する。いつの間にかハヤテはアルの匂いに慣れてしまった。「獣人」ではなく「アル」に慣れたのだ。 「ハヤテ……」 名を呼ばれて顔を上げると頬をペロリと舐められた。口元に鼻先を触れさせ、アルは舌を伸ばしてハヤテの口の中を舐めた。 「ぅふ……ん、ぁう……ん、ん」 アルの舌で咥内を愛撫されて、ハヤテは睫毛を震わせて甘い吐息を吐いた。腰がゾクゾクしてしまう。 「……あ」 アルはハヤテの華奢な体をゆっくりとベッドに横たわらせた。大きな手でハヤテの服の胸元を解く。 「アル?」 「お前を他の奴に触れさせたくない。お前を俺のものにしたい」 「?」 ハヤテはすでにアルのものだ。大金を払って買ったし、ペットとして側に置いているのに……意味が分からず、きょとんとしてハヤテはアルを見上げた。 「んぅ」 再びアルはハヤテの口の中を舐めた。いつもと少し違う。いつもよりもずっと濃厚で甘い接吻だった。 「ん、ふぅ……あ、アル? お尻弄んの?」 「ああ、それに挿れるぞ」 「何を……あ!」 アルは勃起した獣人のペニスをハヤテの腰に擦り付けた。 「これをお前に挿れたい」 「は……えっ?」 アルは真剣な眼差しでハヤテを見つめて言った。 「セックスしようか。ハヤテ」

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