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 それを侍女から聞かされた時は焦ったが、幸い春菊はきちんと部屋にいて、微量ながら食事もしてくれた。  ほっとする反面、追い詰められた春菊がいつ行動を起こすだろうかと目を光らせていた矢先、春菊が行動を起こしたのは寝静まった深夜だったということは言うまでもない。  いつからこれほどまで春菊を想うようになったのだろうか……。  はじめは弟が出来たように接していたはずが、いつの間にか慕情へと変化していた。それを知ったのは、春菊が海を見たいと願っていたその時だ。  熱を持つ彼の頬が蒸気し、短い吐息が赤い唇から放たれるたびに胸が高鳴った。うっすらと滲んだ汗が首筋を流れ、胸を伝ったのを見た時は抱きたいという欲望さえ芽生えた。  彼は自分が知らないうちに美しい色子へと変化していたのだ。  ――そして止めは楼主のあの言葉。  ガマガエルのようなあの顔で、まだ健康ではない身体のまま水揚げをしようとそう言うではないか。冗談ではない。他の男に抱かれて水揚げをされ、しかもそれでまた身体を壊したら……。  それを考えるだけでも虫唾(むしず)が走る。 (春菊は誰にも渡さない)  胸の頂きを摘み上げ、やがて突起がツンと尖ってくると、指の腹で左右上下に動かしてやる。 「っふ、ん……」 「午後、母が来たそうだね?」  口元を必死に覆う春菊に、谷嶋はそう言うと、彼の身体が小さく震えた。

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