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 ハルは、細身で色白なのにとても働き者だった。後ろに束ねられた漆黒の髪がくりっとした目を強調させて、小さな顔に小鼻がちょこんと乗り、とても可愛らしい娘だ。  春菊は思う。きっと匡也はこんな女性が好きなのだろうと……。  自分にはない、可愛らしい女性と、匡也が所帯を持つのだ。  そう思うと、春菊の目から、また新しい涙が込み上げてくる。 「どうかなさったんですか!?」  褥の上でうずくまり、泣いている春菊をすぐさま見つけた彼女は、大きな目をいっそう大きくさせ、自分を見下ろしていた。 「旦那様!! 旦那様!!」  そして、小さな唇を開けた彼女は、細い身体のどこでそんな声が出せるのかというくらいの大きい声を出し、この屋敷の主人である匡也を呼ぶ。  春菊は慌てた。だって今、匡也を呼ばれれば、ただでさえ彼には迷惑をかけ通しなのに、余計、迷惑がかかってしまう。  そうなれば、優しい彼のことだ。大切な仕事にも行くことが難しくなるかもしれない。運が悪ければ、お抱え医師の話もなくなってしまう。  春菊は乱暴に目を擦り、涙を拭った。 「ハル? どうしました? 春菊、何かあった?」  タイミング良く、春菊が涙を拭ったと同時に、新たな人物がやって来た。長身で肩幅が広く、涼やかな相貌をした粋(いき)な男性は言わずとしれた、ここの屋敷の主。春菊の想い人である匡也だ。  春菊の前に現れた匡也は、普段とても冷静なのに、今はなんとなく慌てているようにも見えた。それはきっと、仕事に行く支度をしていたのに呼び出されたからだ。 「なんでもない。ちょっと怖い夢、見ちゃって……」  匡也に心配をかけてはいけない。

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