29 / 32

*

 春菊の身体が大きく弓なる。 「ぅああっ、ダメ、だめ、だめっ!!」  あろうことか、秘部を弄る手とは反対の手が、春菊自身に触れてきたではないか。彼の大きな手が、春菊の両手を包み込み、その上からこね回される。おかげで自慰でもしているような、そんな気分になってしまう。 「ん、っふ、やぁっ、これやぁっ!!」  匡也の手が動くたび、春菊の手も動き、先端から溢れた雫がいやらしい水音を奏でる。  春菊は後ろと前を同時に弄られ、おかげで耐えられないほどの狂おしい熱が襲う。  快楽の波が春菊を覆い、身体が小刻みに震える。 「やぁだっ、ぬるぬるするっ、っふぇっ!!」  大好きな匡也の前で、自分自身を握り、擦り上げる。  言い知れない羞恥。  それがさらなる快楽となり、春菊を喘がせる。  自身を直に触れているおかげで、もうこれ以上ないくらいに膨れ上がっているのがわかる。今にも吐き出してしまいそうだ。 「なら、この手をのけなさい」  意識に埋もれてしまいそうになる中、優しい誘惑が春菊に囁く。 (でも……そんなこと……) 「だめっ!! 汚すからっ、できないっ!!」  甘い誘惑を拒絶する春菊。すると、前と後ろを弄る手は、やわやわと動かすだけになった。  そうすると、次に生まれるのは、ほんの少しの考える余裕だ。  その時だった。匡也の低い声が、春菊の耳に直接入ってきた。みぞおちに響く。 「春菊、君は汚れてはいないよ?」 「っつ!!」  それは春菊が常に思っていること――。  それを、匡也にぴしゃりと言い当てられ、春菊の身体が静止した。 ――そう、春菊は色子。たとえ水揚げがまだだったとしても、彼のような綺麗な存在ではない。それに、廓では、匡也を想い、自慰さえもしたことがある。そんな自分が汚れていないと、いったい誰が言えるだろう。

ともだちにシェアしよう!