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episode.1-6

「おちびちゃん、分かるか?ジェームズはもう臓物は食わない。分かったらさっさと手を洗って帰んな」 写真より酷い顔つきだった。 瞳孔が開き切って、隈は色濃く、異常に青白い。 おまけに腕は引っ掻き傷と瘡蓋だらけで、足元は覚束ず、骨が浮き出るほど痩せこけていた。 一目でジャンキーだと分かった。それもかなり度が進み、静脈に大量の注射痕を有していた。 渉は彼を睨め付け、ハンカチを携えて再び走り去った。 「良い天気だな相棒、昨日は雨だった。明日、明日はマイクに会おう、そうだそれが良い」 囁く様な声音で話し続ける。ちっとも脈絡が無い。 「…寝屋川隊長、萱島です。初めまして」 無駄かと思いつつ、右手を差し出す。案の定彼は一瞥を寄越して終わった。 頸椎付近を掻き毟り、寝屋川は早々に踵を返した。 「寒いな、あそこは暑かったのに…俺は何時になれば戻れるんだ。ヘンリー?何処だ、飯に行こう」 彼は何か、行進曲の様な物を呟きながら去って行った。仕事にならない所か…話すらままならないのか。 残された血痕を睨み、途方に暮れる。 「萱島さん?」 今度は聞き覚えのある声が降って来た。 振り向いて視界に映った戸和の姿に、何故だろう。急に泣きたくなっていた。 「…事務所に呼び出された客もこんな気持ちだったのかな」 「貴方の前職の事は存じませんが、さっさと戻って下さい。隊長の事は気にしなくて結構です」 冷めた物言いすら今は心地良い。その背中に続こうとして、ふと萱島は疑問を口にした。 「戸和、ジェームズって知ってる?」 ぴたりと足取りが止まった。横顔に、初めて感情を認めた。 分かり難いが、僅かに動揺が浮かんでいる。 「…彼は」 再び前を向く。重苦しい時が流れた。 「長くなりますので、また時間のある時に」 やんわりと回避して黙り込む。 先立つ青年へ了承し、萱島はそれ以上の追及を止めた。

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