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episode.1-7
再び本部メインルーム。
海堂は喧しいイヤホンを押さえ、怪訝な顔を浮かべた。
「何か…やけに戸和のインカムが多いな」
「多いだけじゃなくて、全部新手の指示だぞ。俺がさっき上げた報告書にまで突っ込んできやがった。ついに影分身修得したか」
眉根を寄せて前方のスクリーン脇を見やる。
定位置に構えた副主任の隣、今日は2つ目の椅子へ小柄なシルエットが掛けていた。
「…まさかあの新人」
目を疑う。
戸和が、自分のパソコンの液晶を彼に見せている。
入って初日の人間に対して、あの個人主義の青年が。
「う、うわああああ!!」
全員がはっとした。突如メインルームの平静を割り、少年の絶叫が劈いた。
「またか」
「…だから薬は毎回確認しろって言ったんだ」
泣き叫ぶ少年へ距離を詰め、司馬が腕を掴み上げる。
「りょ、りょうがああ!死んで…る…!っあああ!!」
「落ち着け渉、亮はもうとっくに居ないだろ」
「ちがう!ほんとに、いま目の前でっ!さっきまで俺と、喋ってたんだよ!!」
司馬を振り解きのた打ち回る。発作だ。
騒然とする現場に、萱島は立ち上がっていた。
「…渉?」
「フラッシュバックです。去年からPTSDを発症してる」
戸和の台詞を聞くや、咄嗟に机を飛び越えた。
止める間も無く、その姿が少年へと一目散に駆け出す。
「だれかっ!だれかりょうを助けろよお…!!何で死ななきゃいけないんだよ!…俺、りょう…っう、あ、はあっ…」
渉が顔を真っ赤にして苦しみ出した。過呼吸だ。
咄嗟に袋を捜す司馬の隣、飛び込んだ萱島が少年を捕まえる。
背後から抑えこみ、口元を些か乱暴に塞ぐ。
呆然とする司馬の傍ら、萱島は充血した大きな瞳を覗き込んだ。
「なあ渉、さっきの死骸は?何処やった?」
必死に萱島の腕を掻き毟る。渉は先よりも呼吸を落ち着かせ、それでもぼたぼたと涙を零しながら見返した。
「っ、え…?」
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