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episode.2-3
比較的片付いたデスクを前に牧がキーボードを叩く。
デスクトップ型PCのフレームには、所狭しと走り書きの付箋が張り付けられていた。
“17:30合同調査M”、“Y建設TEL折り返し”…
「“聖女シスターズ発売日(7日)”」
「この俺がエロゲ以外を予約しているだと…それはさて置き萱島さん、面倒ですが簡単にうちの業務内容をご説明しましょう」
牧がエンターキーを弾いた。
画面中央から放射線状にパイプが伸び、大小様々な人や建物が囲む様に出現した。
「要は調査対象の付き合いのある友人、ご近所さんを全部洗うだけです。ただ直接コンタクトを取るのはE班の仕事なんで、俺らはノータッチ。全部千葉に回して下さい。それからもう1個主な仕事が…」
上から情報共有システムが展開する。
リストの中から“派遣調査隊”の項目を開き、下部のカレンダーを拡大した。
「調査隊のサポートですね。奴らが厄介な仕事に赴く際、俺らが地形を把握しながら無線で指示を出す。合同調査とも呼ばれてますが、なんせ面倒なのがスケジューリン…萱島さん」
「ん?」
「見え辛いんですか」
後ろから己の首に抱き付く上司に問うた。萱島は至って平静に否定だけを寄越した。
副班が「班長そこ代われ」と言わんばかりの目で2人を凝視していた。
お前まで洗脳されていたのか。牧はそっちの事実に衝撃を受け、説明も置き去りに歯ぎしりする部下へ呆ける。
「牧、さっきの画面もう1回出して」
はっとしてディスプレイへ意識を戻した。
「イメージマップですか?」
「そう。あと、確かこれ」
萱島の手が牧の上に重なった。
おおう…と流石に過ぎたスキンシップに閉口する傍ら、上から萱島の手がマウスを操作する。
「どっかで見た事あるんだよなあ…つい最近なんだよな。ちょっと待って、多分大城さんと歩いてた時だから…」
殊更に身を乗り出す。ネクタイが牧の耳元を掠める。
序にカリッと何かを引っ掻く様な音が聞こえた。
頭上を見上げれば、上司は液晶を向いたまま弄ぶボールペンの先を噛んでいる。
唇の先で触れ、つうとなぞり。
最後に覗いた舌先が唇を舐め取った。
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