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episode.2-5
「私は副隊長のマクドネルと申します!“ウッド”と呼ばれておりますので、主任もどうぞその様に!」
「あー…ウッド?ちょっと先に…場所を変えないか」
「了解しました!それでは休憩室が御座いますので、私めがご案内いたします!」
擬音でも付きそうな勢いでウッドが前進を始めた。
廊下の脇に居た青年らが、ガムを噛みながらガンを飛ばしてくる。
萱島は思わず習性でやり返しそうになった。
ウッドがきびきびとした所作でドアを開け、萱島を中へと促した。広いだけの空間で、休憩室というよりはただの“溜まり場”だったが。
「…来週の合同調査の資料と、こっちがミーティング用の資料。目を通してチームの候補と、不明点は纏めといて欲しいそうだ」
「承知しました。御足労お掛けしまして、申し訳御座いません」
「いや全然構わないけど…寝屋川隊長は?」
ウッドの表情が曇った。
「サーは奥の部屋に居ます。ただマトモに話せるのはほんの数刻で、それ以外は殆ど自分の世界から出てこない。私が代理として指揮をとっています故、すべてその様に」
萱島の脳裏に青白い顔が浮かんだ。
覚せい剤に溺れ、彼は完全に飛んでしまっていた。
それでも尚、彼を調査責任者として据える意味は何なのか。
萱島の視線を理解したのか、ウッドは褐色の瞳を険しくして告げた。
「我々はサー以外に下る気は全く無い。サーは私の、皆の恩人です。あの人が老いて生を全うするまで、我々は喜んで世話をする所存だ」
「…隊長はいつから、あんな状態に?」
ウッドの言葉には返さず、萱島は問うた。
「去年です、主任。去年のあの件で全てが可笑しくなった」
矢張り。
去年に一体何があったのかは知らないが、この会社の薄暗さには理由が存在する。
萱島は礼を告げ、太い腕を叩いて早々とその場を去った。
黙ってその後ろ姿を見送る。副隊長の傍らへ、煙草を咥えた青年が訝しげな顔で現れた。
「アレが新しい上の主任ですか?冗談じゃない」
青年はぴっと横に首を切る動作をする。
「俺がガン付ける前から…コイツ殺し屋じゃねえかってくらい、殺気飛ばしてやがりましたよ。一気に周りがピリピリしちまった、ああいう輩は狂ってる」
吐き捨てた煙草を揉み消す。
資料を握り締め、ウッドは青年の言葉へ同意した。
神崎社長は一体何を考えているのか。未だ、現場にはちっとも分からず終いだ。
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