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episode.3-13

「何かあったとして気不味くなろうが、いずれ時が解決してくれる。大丈夫ですよ、俺らもそうでしたから」 口を噤んだ。 その言葉の重さに、少し足取りが遅くなった。 現在の班長は渉も含め、全員3年以上前からの古株だった。 惨たらしい死を目の当たりにし、触れ難い生傷を共有し、それでも彼らは此処に残っている。 もしかすると、寂しくて離れられなかったのだろうか。 旅立っていった仲間は、その思い出にしか存在し得ない。 消えてしまうのが恐ろしく、ずっと過去に縋って抜け出せずに居たのだろうか。 「何だ、今日は主任がやけに静かだな」 「戸和が出張で居ないからだろ」 「ああ、なる」 お前ら人がセンチメンタルな想いを馳せている時に。 ちゃっかり聞いていた当人は、千葉の隣あからさまに不機嫌を呈す。 戸和が何だ。戸和が。 まったく今日は1日居ないのか、何で居ないんだ。出張か。 何だ出張って。何処に居るんだ、会いに行くぞまったく。 「主任、今朝渡した多摩製薬の関連って粗方出せました?」 「牧にツール送って貰ったから、取り敢えず時期と相手毎に掻い摘んでまとめて概要だけさっきお前に送っといた。元データは共有フォルダ」 「…はいどうもー」 仕事は早い。 千葉は頬杖を突いてメーラーを開く。 ただその仕事の早い主任はと言えば、気にしていない風でその実10回は副主任の椅子を振り向き、しかもさっきパソコンを見たら別窓で競馬チャンネルを開いていた。 その神経の図太さは、戸和と違うベクトルに突き抜けているらしかった。 さて、部下らも早々とタスクを処理するべく背筋を伸ばす。 前方のスクリーンを見やり、“unfinished”の列を目で数えた。 ところが矢先、その表示が突如真っ赤な警告に変わった。 鳴り響く不快な音に職員が一斉に顔を上げる。 渉がマグカップを床に落とした。 破片が床へと飛び散り、見慣れたキャラクターの顔が原型を失う。 「…この音」 小さな総身がガタガタと震え出す。 牧が勢い良く立ち上がり、前方の戸和の椅子へと走っていた。 「牧、何だこの音」 横から萱島が追い掛ける。 牧は画面のロックを外し、常より急かれた様相で監視映像を探り始めた。

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