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episode.3-16

『Hold…Standby, standby. Patience…Don't do anything stupid.(未だ待て、未だだ、もう少し…我慢しろ、馬鹿な気は起こすな)」 グリップを握る手に力が籠る。 不思議と指先の震えは止まっていた。 『Affirmative, buddy, here comes…OK. Commence firing !!(そうだ相棒、来るぞ…よし、今だ撃て!)』 CZ75が火を噴いた。 萱島の身体が反動に揺れる。間を置かず、巨大な車体が僅かに傾いて停車した。 心臓の音が全身に響いていた。 硝煙が上る視界を見詰め、萱島は呆然と肩で息をした。 「…Good shot. Well done, soldier」 声が直ぐ背後から届いた。 意表を突かれて振り返る。 短い金髪に鋭い目。 デザートカラーの軍服を羽織り、悠然とM4を携える男が其処に居た。 「…寝屋川隊長…?」 萱島が呆気に取られて呟く。 あの初期に見たジャンキーの欠片もない。 上司はシニカルに口端を上げるや、萱島の首根を掴み、予告も無く背後へと放り投げた。 「ぐへっ」 強かにコンクリートに頭を打つ。 先まで居た場所に次々と銃弾が飛来した。 「All right, 萱島…今日は俺とお前のバディだ、離れるなよ」 肩を叩き、彼は走り出した。 困惑を隠せぬままそれでも立ち上がり、萱島はその姿を追い掛ける。 直ぐ脇の車へ銃弾が跳ねる。 動き出した2つの影を銃口が追った。 寝屋川は突撃銃の追従をかわし、側面へと擦り抜けた。 そしてまたも手荒に部下を掴み、柱の隙間に押し込む。 「…っ隊長!身体は…」 「見ての通りこの為体(ていたらく)だ、ロクに動けねえがお前に希望くらいはくれてやる」 何かが放られる。慌てて掴むと手榴弾だった。 初めて触れた兵器にぎょっとする萱島を余所に、寝屋川は目を眇めて対象を睨んでいた。

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