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episode.3-18

「野郎…化け物か…!」 敵は後退を余儀なくされ、柱の陰へと滑り込む。 回避先を狙い、寝屋川は装着されたアンダーバレル・ショットガンをぶっ放した。 散弾に呻いて男が地面に転がった。 休む間も無く2発目が飛弾し、周囲の敵も慄き伏せった。 「You are too lenient…easy, schweinehund. Beat it(温過ぎるんだよ豚野郎…さっさと帰んな)」 マガジンを捨てて装填する。 寝屋川は部下の方角へと視線をやった。 車体の背後に回り、萱島が通路の仕切りを飛び越えた。 順調かと思ったのも束の間、不意に新たな殺気が現場を刺す。 運転手の男が勘付いていた。 リアガラスを振り返り、遮蔽物を出る部下へと拳銃を構えていた。 即刻で姿を狙うも、此処に来て限界の指先が痙攣する。 銃弾がフロントガラスへ逸れた。 寝屋川は舌打ちするや、上着から抜いたナイフを振り被って投擲した。 「Do it!――Fuck that !!」 運転手が肩から吹き飛ぶ。 ピンを抜いた萱島が手榴弾を放った。 2人は状況を把握出来ない敵を余所に、一斉に遮断物に身を投げた。 空白のち、凄まじい爆音が辺りへ響く。 車体は黒煙を噴き上げ、敵の断末魔を掻き消した。 塀の向こうで息を荒げながら、萱島は間一髪の生存に脱力して転がった。 立ち上る炎にスプリンクラーの水が降り注ぐ。 どうやら一件落着の様だ。 酷い光景を眺めながら、寝屋川はM4を放ってインカムへ呼び掛けた。 「Hey, 牧、我が隊の勇姿はバッチリ録画出来てるな?」 『…当たり前でしょう、ノーカットでDVDに焼いてやりますよ』 興奮を押さえ切れない牧が冗談を返す。 寝屋川は壁に背を預け、声を上げて笑った。 「萱島さん…また貴方は彼方此方怪我して…」 調査員と帰還した戸和が呆れた声を出した。 不可抗力だ。目視されつつ、萱島は不機嫌を隠しもしなかった。 「こんな時にお前が居ないからだろ、お前が」 「良いから下に来て下さい…救護所で手当てします」 引継ぎもそこそこに部下へ手を引かれる。 まあ副社長もお帰りになった事だし、後はどうとでもなるだろう。 「戸和、俺決めたわ。寝屋川隊長に嫁ぐ」 「そうですか。せいぜい頑張って下さい」

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