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episode.4-4
「――おー!お前…お前バカ、電話出ろよ!」
中央館の廊下。
転がる様に駆けて来た派手な男に戸和は振り返った。
昼時で人も多い中、良く通る男の声が視線を吸い寄せる。
戸和だ。法学の。
ギャラリーは渦中の人物に気付いてざわめいた。
「俺がぼっち飯になるだろが!」
「何だ、居たのか」
「携帯くらい見ろや。課題教えてやらんぞ」
携帯?
戸和はふと上着に手を伸ばして動きを止めた。
「…会社」
「あ?何?忘れた?お前が…?おい大丈夫か、バッテリーか?そろそろ動力元お取り換えの時期か?」
「はっ倒すぞ」
友人・磯辺は首を傾げて戸和の背中を調べ始める。
しかし直後、彼は衝撃に吹き飛んで廊下へとダイブした。
「うっそー!!来てたの?やだやだ、久し振りー!」
「は…鼻折れた」
「今日試験だもんねー、良かった―早起きして!」
これまた派手な女生徒が現れ縋り付く。
砂糖を多分に乗っけた声を出し、小首を傾げて覗き込んだ。
押し退けられた磯辺は、這い蹲りながら声を荒げる。
「こらブス!太い脚出すなや、視界の暴力だろ!」
「え、何?居たの磯辺。きもっ」
「おい戸和、そんな枕営業のキャバ嬢相手すんな」
「ちげーし。心奈の実力だし」
金髪を後ろに掻き上げる。
戸和は我関せず社用携帯からメールを返していた。
このつけ睫毛アイプチ女。
磯辺は鼻骨を押さえ眼光を鋭くする。
喧しい一帯に、人波が自然とその場を避ける。
周囲が食堂の席取りへと急ぐ中、両者は未だ廊下で睨み合っていた。
「磯辺、置いて行くぞ」
毎度のやり取りを放ったらかし、メールを終えた戸和が歩き出す。
「「あ、待って」」
綺麗に重なる2人が舌打ちした。
心奈は無理やり戸和の腕を取るや、早々に隣へと滑り込んでいた。
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