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episode.4-14

「7人の身寄りの無い子供が、男に拾われ暮らしていた。ある日近所の住人が異臭を感じて通報してみれば…警察もびっくり。家の中に2体、畑に3体、腐敗の上解体された状態で発見。生きてたのは当時6歳の少年1人のみ。残りの1人は…マトモな部位がみつから無かったから、まあ食べたんじゃないかって言われてたけどね」 黒川の淡々とした声が猟奇殺人の概要を述べた。 相変わらず、聞いただけで鳩尾辺りまで不快になる一件だった。 「萱島は生き残った。生き残ってしまったんだ。只管前を向こうとはしているが…この子は今も、これからも一生あの家から出られない」 徐々に男の貼り付いた笑みが切れる。 そうしてぽつりと、珍しく負の感情を乗せた声で呟いた。 「その家に落ちてたんだよ。携帯が…一体どこの馬鹿が連れて行ったんだろうねえ」 告げて、傷だらけの携帯が手渡された。 受け取った神崎は、静かに背を向けて部屋を後にする男を見送る。 何者かが萱島の身柄を拉致し、無理やり彼の生家へ連れ込んだと言うのか。 加害者には何の得があったのか。少なくとも顛末を知った人間には違いない。 そして萱島のことも、現在の居場所ですら掴んでいる。其処まで考えると、特定も難しい事ではない。 唯、それだけでは解決しない。 白い生気の無い頬を指先で撫でやり、神崎は曰く“厄介”を見詰める。 「…帰るか」 前の住処が残っていようが、君の新しい人生は始まっている。 ふと渡された携帯を操作し、メールと通話の履歴に目を通す。 会社関係の下、怪しい着信に指先を留めた。 霧谷。 覚えの無い名前だが、時刻からして関係者で当たりだろう。 パイプ椅子へ凭れ、早々と調査員に文章を飛ばす。 “対象の捕縛を要請” そうしていつもの文面を付け足した。 “話せるようなら四肢欠損は問わない” 携帯を上着に仕舞うや、用は済んだとばかりに席を立つ。 件の着信元について伺うべく、神崎は消えた男を追い掛け病室を後にしていた。 この独特の臭い 吐き気のする臭い 喧しい蝉の声 汗の噴き出る暑さ 只管に暗闇 あの時遂に出口を見つけた気がしたが トゥルーエンドは先の先 いつになっても再びこの家に戻されている そして音がする 此方を見てる人間?目は2つある 暗い屋敷には、7人の子どもと殺人鬼 臓器くじ、の概念を知っているか 1人を殺して大勢を助けるのはよいことだろうか?という問いだ その議論に答えは出ないまま、逆はどうなのだろうかと考える つまり1人が生き残るために 殺人鬼 問題外か?例えば善悪の判別もない子供だったとして、生存の為に仲間を殺したり、食したり 家の中 畑に、問題外だろうか 考えてみて欲しい もしも善良な家庭に生まれ、温かい食を囲み満たされた布団で眠れば まったく異なる見識が芽生え、他人を犠牲にする思考など無かったのに 結局建前の裏で世間は言う それは要らない仮定である 求められるのは結果論である 一生の罪である あの家から出られない 結局は自分が悪い 一人でどうにかする他ない 死んだ人間は正義 生き残ったなら、自分は

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