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episode.4-19
「――所有船舶?何を仰っているのか分かり兼ねる、そんなお話は記憶に有りませんが」
ネクタイを引き抜き、ソファーの上に放った。
そのままキッチンに向かい冷蔵庫を開け、中身を確認しつつ献立を組む。
「此方も忙しい、それなりの額は提示します」
何も無いな…と電話の傍ら呟く。
逡巡し、神崎は結局扉を蹴って閉めた。
本郷が目撃していたら確実に説教されていた。
冷蔵庫に凭れてミネラルウォーターを飲む。
子供が好きな献立を組むなら、買い物に出ねばならない。
考えている間も、回線の向こうでは喧しいクライアントが騒ぎ立てていた。
「1億5千」
すっぱり告げる。
ペットボトルを宙に放り、暇潰しに半ばで掴まえた。
「いい天気ですね閣下、回答は本日中に文書でどうぞ」
一方的に通話を切るのはいつもの事だ。
それよりも買い物に行きたいが、どうしたものか。
腕を組んで晴れ渡る窓の外を睨む。
其処でタイミング良く玄関が開き、出張帰りの同居人が廊下を突っ切ってきた。
「おう、義世くんお帰り」
「死ぬ」
素晴らしく端的だ。
目に見えて顔色の悪い本郷は、戻るなり壁に突っ伏した。
「話ついたか?」
問うや、無言で封筒を差し出した。
中を開けば流石。直筆の誓約書が確認出来る。
「よし上等、ところで八つ橋は」
「死ね」
殺意の滲んだ目に然しもの神崎も黙った。
「…後の事は俺に任せろ」
「ったりめーだ、てめえが全部やれ。萱島は?」
「部屋」
ミネラルウォーターを奪い取り、本郷が突き当りの方角を見やる。
「御坂にでも任した方が良いんじゃないか」
「まあ…俺が面倒見るって言っちゃったからな」
一応その辺の責任感は有しているらしい。
キャップを開け冷えた物を煽れば、幾分苛立ちが収束し始めていた。
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