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episode(6-0) 「close round」
「こ、康祐!遥に会ったって本当か!?」
子犬の様に飛び付いて来た男に踉く。
アイスグレーの瞳を輝かせ、バートは今世紀最大の発見に出会した様に顔を綻ばせていた。
「…そうだね、君の息子で間違いは無いと思うよ。目の色が全く同じだし」
「うわー!じゃあ何だ、此処の大学に通ってるのか!?ど、どうしよう…ばったり廊下で遭遇したりしないかな?」
「別に連絡して会ったら良いじゃない」
御坂は冷めた風で至極マトモな意見を吐いた。
すると先まではしゃいでいたのがどうだ、親友は急に苦い表情を浮かべて押し黙る。
「なにその顔。どっちなのさ」
「違う…会いたい。勿論会いたいに決まってるんだ…でも俺にそんな資格あると思うか?実質捨てたんだぞ、未だ生まれて間もないアイツを!」
「許すかどうかを決めるのは本人だと思うよ」
尚も淡々とした友人に、バートは漸く落ち着きを取り戻す。
同時に落胆から肩を下げ、白衣のポケットに手を入れて歩き回った。
「ああー…でも今更父親が出て来た所でなあ…今幾つだっけ、14だろ?」
「はは、第二反抗期まっ盛りだね」
「なあどんな顔だった?身長は?」
「無愛想だけど利口そうな顔はしてたよ、身長も標準より高めじゃない」
「…そうだ写真撮って来てくれよ康祐!何か贈り物とかしたら迷惑かな、あ…ちゃんと飯食べてるか?生活は?」
「君さあ…そんなに気になるなら会わないと一生後悔するよ。良いじゃない嫌われてても、挽回する方法なんて幾らでもあるんだから」
御坂は男の面倒な性格を知りつつ、根本を指摘する。
斜め前を行くバートはダメージを受け、眉尻を垂れていた。
「だよな、お前の言う通り。でも俺がどうしようもないチキンなのは知ってるだろ」
「じゃあ当人に聞いてきてあげようか?君の事」
「あー…そうだな、いや…!大丈夫だ、少し時間をくれ!」
一人目まぐるしく表情を変えるや、掌で静止を掛けた。
次いで難問へ眉間に皺を寄せていたが、それも束の間、
またも破顔し、殊更楽しそうに大国特有のオーバーリアクションを披露する。
「そうかそうか遥がそんな大きくなってるのか…!嬉しいなあ、本当、こんなに嬉しい事は無いよ!」
子供の様な喜び様に、御坂は思わず苦笑を湛えた。
「一緒に暮らせたら最高だろうな。もし次に会えたら、絶対に俺から手を離したりしないぞ。神に誓おう」
バートの瞳は人の親として、強い意志に満ちていた。
単純明快。それでいて大っぴら。
“友達甲斐のある”男の肩を叩き、御坂は人知れず親子の再会を願った。
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