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episode.6-7

化け物だ。 神崎は満足そうに歩く部下を眺め、結論付けた。 相変わらずころころ表情豊かに話す、その腹へ一店舗のお品書きの実に3割強が収まっている。 あれ?あれ?とウェイターが目を擦る間に料理が消え、当然の様にまた端からデザートを頼んでは消え、頼んでは消え。 質量保存の法則は崩壊した様だ。 楽しそうな当人はけろりとし、数時間後には「お腹が空いた」とほざきそうな勢いである。 「あ、珍しいですね…露店でお好み焼き焼いてるの」 香ばしいソースの匂いに萱島が反応した。 嫌な予感がした雇用主は、もう黙って通り過ぎようとした。 「あれほんとテロだよなあ…ちょっとすいません社長、其処で待ってて貰えますか」 道路を越えて行きそうな化物の腕を掴む。 何だお前と言わんばかりの顔が此方を向いた。 「何を待つ必要があるんだよ」 「いやお土産にしようかと」 自白する部下の頬を、無表情で引っ張った。 萱島は直ぐに痛いと喚き始めた。 「な、なんら!ひらいなんれすか!」 「嫌いじゃないが何かこう…少しイラっとして…」 「…り、りふひんら」 まったく不当な扱いだろうが反論を奪われる。 なんせその台詞を言われたのも、既に何度目やら分からない。 悲しみに暮れる部下を余所に、神崎は道中で不意に動きを止めた。 誰かの視線だ。それも人気の無い、右後方路地からの。 嫌な予感がしつつ、半身で振り向く。 神崎の視界には、背景から隔絶された様な白衣の男が見えていた。 「…御坂」 何故この様な市街地で。 胡乱に片眉を上げる神崎に反し、相手はレンズ越しの瞳を和らげた。 「こんな所で奇遇だね遥。おや、その子は…」 其処で萱島も現れた男を認識したが。 ディティールを処理した直後、警戒値が一気に振り切れる。 大量の殺気が刺していた。 全身の肌が粟立ち、瞳孔が収縮する。 感知した其処からはまさに一瞬だった。 殆ど条件反射で銃を抜き、男の方角へとマズルを突き付ける。 驚いた神崎がそれを掴み上げると同時、御坂が背後へ手で制止を掛けた。 しんと刹那の攻防が収まり、静寂が訪れた。 神崎に抑え込まれて尚、息の荒い猟犬は威嚇に思い切り毛を逆立てていた。

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