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episode.6-8

(何だ、コイツは) 恐れに背筋を汗が這う。 萱島の胸元に、何時の間にか無数のレーザー光が浮かび上がっていた。 赤いポインタと同数の殺気が肌を刺す。 その全てが、御坂という男の背後から降り注いでいた。 「…びっくりした。野生動物みたいだね」 目を丸くした御坂が感嘆して呟く。 彼が制止に掲げた手を下ろすや、萱島のシャツを這うエイミングがぷつりと消えた。 「沙南、気にするな。俺の友人だ」 社長の言葉に今度は萱島が目を丸くした。 いや、気になるわ。 口を挟み掛けたが、仕方なく拘束を解かれるや銃を仕舞う。 「ごめんね本当、過保護で困るよ」 「そもそも出歩くなよ。迷惑な奴だな」 曰く社長の友人は、失敬な軽口にも実に柔和な笑みを湛えている。 そんな穏やかな男と、大量の狙撃主のアンバランス感や凄まじい。 類は友を呼ぶ。 眉間に皺を刻んだまま、萱島はそう言い聞かせる事にした。 社長はこの男に元々用向きが有ったらしかった。 場は御坂の勤務する研究施設へと移され(この施設がまた胡散臭く、ただの検問へ凄まじい時間を要した)、簡素な室内で2人は対面した。 萱島は未だ警戒を解けず、遠巻きに一帯を見守る。 社長の友人とは伺ったが。 通行人へ憚りなく矛先を向けるなど、完全なアンダーグラウンドの人間か、もしくは。 「僕に用事ってどうしたの、またDNA鑑定の発注?」 「いや、ただの雑談だ」 空調の利いた室内。 解放的な窓の外で木の葉が惑う。 愛銃のCZ75も奪われ、萱島は手持無沙汰に天井を睨んだ。 「…そう。そんな物々しい顔してるから、何かと思っちゃったよ」 矢張り素性が気になり、御坂が首からぶら下げた社員証を見やる。 役職、所属どころか社員番号すら記載がない。 唯のIDチップでしかないカードへ、今と変わらない写真が正面を向いていた。 「繁盛してるみたいだけど、ご飯はちゃんと食べてるの」 「親みたいな事を言うなよ」 「はは、ごめんね。ついね」

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