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episode.6-14

「これだけ調べてグダグダ悩んでも何も無い、お前の意見は」 「…警備員は常駐してますが、朝方にミーティングがある。午前5時から約30分間」 「なら其処で良い。後は全て俺が決めて構わないんだな」 「勿論です」 テンポの速い受け答えにたじろいだが、特殊な経歴が少しは役立った。 カービン銃を肩に掛け直し、寝屋川は数秒思案した後、直ぐに口を開く。 「5人で組む。お前は相当の人員を確保しろ。侵入経路はB5ダクト、目安所要は20分。因みに当日の指揮は?誰が執るんだ」 「牧と瀬田が」 「上等だ、この図が通路の幅まで正確ならお前の組み立て通りで行こう」 「隊長」 萱島は間を置き、はっきりと述べた。 「俺は適当な仕事はしません」 寝屋川が緊張を和らげ、いつもの意図的な笑みを浮かべた。 上司は萱島の肩を叩くや、早々に部下を伴い去っていく。 解放された心地で息を吐いた。 なんと時間にして1分にも満たない、恐ろしく早いミーティングが終了した。 「主任、少し宜しいですか」 今度は隣からきびきびした声が呼んだ。 顔を上げるや、未だ其処に居たウッドが覗き込んでいた。 「その…捕虜にしたジェームズ・ミンゲラの件ですが」 「うん?」 「医者の見立てだともう長く無い様です」 神妙なウッドに閉口する。 それは勿論、いつかはその日が来ると分かっていたが。 「誰か親族や知り合いは?見つからないのか」 「ええ、この1年捜しましたが全く。これ以上出来る事も無く、延命治療を打ち切るか社長と話していたのですが…」 萱島は年若い青年の顔を思い出した。 第三者としては、せめて間際まで親族を捜すべきではないかと感じた。 気付けば話の後、自然と脚は彼の眠る部屋へと向かっていた。 階段を上がり、窓の埋め込まれた一室を覗く。 其処には良く知った部下が居た。 パイプ椅子に腰掛け、今日も変わらず背筋を伸ばしたまま、彼はじっと眠るジェームズの相貌を眺めていた。

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