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extra.4-4
可哀想な相手は力で勝てない。
内側の肉を柔らかく揉んでやれば、隣から子犬みたいな声が漏れた。
もう完全にセクハラである。が、この人間であるからして、今も分からずパニックに陥るだけだ。
「萱島さん、キスして良いですか」
「え…えっ?」
「今度一緒にコンビニ行ってあげますから」
何て愚かな上司だろう。
あろう事か、どう考えても可笑しな条件に揺れていた。
「それ何、お前メリットあんの…?」
「いやこっちが聞きたいんですけど」
真性の馬鹿か。
間宮は眉間に皺を刻む。
別にコンビニぐらい何時でも行ってやると言うのに。
苛ついて了承も聞かず唇を塞いだ。
「んんー!」
暴れているが知った事では無い。
砂糖で出来た身体は、唇すら恐ろしく甘かった。
色気なく暴れる相手の其処を舐め取る。
肩を戦慄かせ、頑なに距離を取ろうと頑張る姿を睨んだ。
「口開けて貰えます?」
「……」
「痛っ」
仕舞いに叩かれる。
本当は大して痛くは無かったが、怯むには十分だった。
萱島は一瞬の隙に慌てて飛び抜けるや、何かを見つけて廊下の向こうへと走り出す。
「戸和っ、ま、間宮が苛めた…!」
「あ」
タイミング悪く現れた青年が動きを止める。
彼は縋り付く上司を見やり、次いで中途半端な体勢の間宮と観察した。
「苛められる様な事をしたんでしょう」
そしてにべもなく告げた。
「…すみません」
主任はもう、ただの条件反射で謝った。
結局その一件は何の余波も無く、その場限りのおふざけとして幕を閉じた。
ただ上司は後日、申し訳なさそうに件の菓子を持って現れた。
「はい?」
「だって、全部食べたから怒ったのかと…」
この脳みそマシュマロ野郎。
間宮はまた手が出かけるも、少々しおらしい様子に中途で止まる。
何ら悪事を働いた訳でもないのに。
当人は後ろに手を組み、もじもじと此方の許しを待っていた。
「…べっつに怒ってませんけど」
「え!ほんと!」
途端に破顔するその単純さへ、目眩がしそうになる。
無言でパッケージを開けるや、間宮は自分の謝罪に代わり、丸い菓子を相手の口内へ詰め込んだ。
これだけで後腐れ無いのだから、正直甘えているのは自分かもしれない。
間宮は次をねだる上司へ呆れつつ、冒頭の考えを一部修正するのだった。
(好きな子は虐めたくなるね)
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