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episode.7-3
「うわきめえ海堂、何鼻血…主任ちょっと!朝からテロ止めて下さいよ!」
「何?テロ?」
「この無修正エロビ野郎が…おい海堂、大丈夫か…?言い残す事はあるか?」
「た、頼む…俺のPCにmp4で送ってくれ…」
「よし来た、任せろ」
佐瀬が携帯のカメラを起動させた瞬間、背後から振り下ろされた鈍器が直撃した。
床に沈む男を気にも留めず、“刑法総論”を手に戸和が颯爽と通り過ぎた。
「お早う御座います」
「あ、どうも」
「シャツの前開いてますよ」
萱島は自身の胸元を見下ろした。
確かに全開だった。
素直に礼を述べて釦を留め、次いで痙攣する部下の元へ歩み寄る。
「海堂?海堂くんどした、救護室行くか?」
「有難う御座います…俺、今日誕生日なんですよ」
「ええ…お、おめでとう」
光悦と喜ぶ部下に祝辞を述べる。
鮮血に濡れた眼鏡を拾い上げ、装着した海堂がほざいた。
「祝いついでにすいません、ちょっと写真を一枚宜しいでしょうか」
「良いけど」
「あ、もう少し屈んで頂いて…」
萱島は背後から怒気を察知して振り返った。
報告書を手にやって来た牧が、仁王立ちで此方を見下ろしていた。
「…牧がぶった」
地下2階のコンクリートで固められた廊下。
只管携帯でメールを打つ社長の傍ら、萱島が憮然と呟いた。
「牧がぶった」
「あっそう」
「……」
神崎は我関せず、靴音を響かせて廊下を歩いた。
納得の行かない萱島が増々表情を険しくする。
2人は北端の拘置施設へと向かっていた。
最低限の照明と空調だけが廊下に漂う。
冬場の寒さに身を竦め、萱島は仕方なく黙って追従した。
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