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episode.7-8

*** 「サイッテー、信じらんない!読モとか嘘じゃん!」 「いやいや大丈夫大丈夫、ちょっとお風呂入るとこ撮るだけだから」 「きもい!近寄んないで!」 未だ少女の年頃の甲高い声。ドアがぎしぎしと軋む音。 良く通る男の罵声。 それらの騒音すら全く認識せず、今にも突っ伏しそうな本郷は蹌踉めいてエントランスを潜った。 壁に手を突き、自宅へ運ぶエレベーターを呼び出す。 その間に半分意識が飛びかけた。 「おい逃げたぞ、橋本追い掛けろ!」 「いやーーっ!!」 エレベーターがロビーへと到着した。 はっとして目覚め、本郷は面を上げた。 叫声と共に複数の気配が迫っている。 何事かと見回した矢先、裸足の少女が己に飛び付いて来た。 「た…助けてぇ!」 「うっ」 結構な衝撃へ息を詰まらせる。 どうにか相手を支えた矢先、上で撮影をしていたスタッフが駆け下りてきた。 「兄ちゃん良くやった…!未だ済んでないからよ、ほら…そいつこっちに引き渡してくれ!」 「やだぁ…美咲もう帰る!」 何だ何だ。 本郷は回らない頭で、必死に状況理解に務めた。 縋り付く少女は家に帰りたい。 追ってくるオッサンはビデオを撮りたい。 其処に偶々自分が通り掛かった。 要するにタイミングが悪い。 「…待て待て、そもそも小学生じゃ」 如何に此処がヤクザの天国で、AV撮影が日常化していようが違法は宜しくない。 抱き着いて泣きじゃくる少女を確認する。 本郷の顔色が見る見る青ざめた。 「小学生?なんだ、中坊は嘘か?」 「心配すんなて、顔やらも全部モザイク掛けるけえ…お嬢ちゃん!ほんじゃ水着でええけん、こっち戻っといで」 「いや!アンタたちの事、ママに言いつけるから!」 「美咲、美咲ちゃん」 「…へ?」 突然名前を呼ばれ、少女が間の抜けた声を出す。 そうして縋る先を見上げた。 幼い目が、ビー玉の様にまん丸く見開かれていた。

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