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episode.7-13
とろとろのオムライスを食べきり、少女は約束通り帰宅する手筈となった。
車を取りに向かう隙間、萱島は彼女とエントランスに座り込んだ。
「…あのね私、直ぐにでもパパと結婚するの」
衝撃的な告白へ萱島は百面相に陥る。
「この前ニュースで見た。アメリカだと親子で結婚したんだって」
「うん、まあ…可能な州もあるっちゃあるが…神崎社長が恋人じゃなかったの?」
「だからあ、恋人と旦那は違うでしょ」
「…世間ではそれを浮気と言いますが」
「え、なにそれ?萱島さん遅れてる、その考え方超ダサいよ」
悲報。副社長の娘がテラビッチ。
お母さんの教育に傾いたのか、お父さんもそれなりだった為か、不安な先行きに乾いた笑いが漏れた。
「ねえ、萱島さんは遥の事好き?」
子供には良くあることだが、唐突に矛先が変わった。
「好き…かな」
「そう、私も。それとね、パパも遥の事好きだし、庵も遥の事大好きなの」
「庵?」
覚えの無い名前に聞き返す。
「知らない?こんな目してるけど、優しいの。金髪」
少女が眼尻を引っ張る。
それで漸く萱島ははっと思い至った。
寝屋川隊長のことか。
それにしても面識があるとは驚いた。
「ごめん分かった。けど何で知ってるの?」
「だって昔3人で住んでたんだよ。もうすっごい前だけど」
今日は本当に驚く話が多い。
萱島は知らず知らず、前のめりになっていた。
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