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episode.8-2

「――やあ、来る頃だと思ってたよ」 書面を見詰めたまま、御坂は訪問者に先立って告げた。 季節に相応しい曇天。 研究所最上階にある私室には、歓迎されないゲストが足を踏み入れていた。 片やスーツを着込んだ本郷と、M4こそ奪われたものの、不穏な軍服をジャケット代わりに羽織った寝屋川。 RICの重役2名が、何やら物々しい顔で中枢へと接近している。 一室には瞬く間に緊張が満ちていた。 窓の外でスコープを覗く狙撃手が、出番を予期して喉を鳴らす。 「僕に用事かい?お茶でも淹れようか、ちょっと待ってね」 「茶は結構だ御坂、聞きたい件があって来た」 本郷の静止に漸く顔を上げる。 寝屋川は一見、隣で大人しくも暇そうにしていた。 「そう?それにしても…2人とも久し振りだね、元気そうで何より」 「良いからアレをどうにかしてくれ。コイツがブチ切れそうなんだ」 苦言と共に、本郷は右で欠伸するツレを指す。 アレとは即ち、御坂を護衛する狙撃手の殺気であるが。 「難しい事言うね」 「早くしろ、此処が戦場になるぞ」 「まあ…でも確かに、君達とは一度話をしなければと思っていた」 御坂の指先がインカムに伸びた。 煩わしそうな声が、彼を囲う狙撃手に指示を掛けた。 「10分席を外してくれる。それからこの2人は補足対象外、宜しく」 『承諾し兼ねます』 冷めた口調が一蹴する。 「呆れた…頭も悪い、話も聞けない、何が出来るの?君」 『御坂康祐、自分の立場を忘れないで下さい』 「良く言うよ無能」 辛辣に吐き捨てる所長へ、本郷があっと声を漏らす。 頼むからこんな所でキレないでくれ。 だがその懇願よりも早く、御坂は白衣から自動拳銃を引き抜いていた。 「…Oh」 窓ガラスが砕け散り、寝屋川が煩わしそうに片耳を塞ぐ。 貫通した銃弾が狙撃手の大腿に埋まり、彼は木の上からもんどり打って落下した。 『――な…何をしている御坂!銃を仕舞え…!!』 負傷者を目撃するや、錯乱した部下が吠え立てた。 動揺しつつも、残りの狙撃手らが今度は本郷らへ照準を向け始めた。 「待て待て、お前部下を撃つなよ…!」 「それが部下じゃないんだ、生憎」 見兼ねた本郷も文句を投げたが、御坂は何処吹く風で残弾を撃ち込み始める。 相変わらず何て意味不明な場所だ。 応戦に惑っていた狙撃手らも、端から射的の景品の如くバタバタと倒れていった。

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