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episode.8-14

「君はどうして私を知っている?」 ああ、そんな事。 聞かれたところで、此方は微塵もシナプスが繋がらない。 「まさか本当に記憶転移があったのか?君は誰だ?その男の父親か?バート…」 覚えのない名に片眉が吊り上がる。 神崎の父親。それがよもや、この場に関係があるのか。 「…バート・ディーフェンベーカー…」 意識のない間にマズルが垂れ下がっていた。 突如、相対した男から漏れ出す怒気に慄く。 彼は顔中へ皺を寄せ、まるで百年来の仇の様に憎しみを剥き出した。 「その目で俺を見るな…!死んだ分際で!」 「…、何の話」 「前に出ろ!」 矢庭に一括される。 その声量に弾かれ、萱島の総身がびくりと強張った。 「お前からだ…」 右手を掲げた男の周囲より、無数に伸びる光が萱島を刺す。 胸元で揺らぐ点を呆然と見据えた。 撃たれる。 死を予期して背中が冷えた。硬直して、脚が接着されてしまう。 後ろの彼を逃さねば。これでは何の為に追ってきたのか分からない。 何の為に、こうして彼の前へ。 「――ぐぁあっ…!!」 はっとして焦点の合わない目を上げた。 遥か頭上、確かに潜伏する敵の呻き声が飛んでいた。 全員が其方へ気を取られる中、背後から伸びた手が萱島を引き寄せる。 「…っ社長!」 蹌踉きながらも、どうにか彼に倣って上を見た。 頭上に広がるのは、太陽光を通すための淡いステンドグラスだ。 (何か…) 目を凝らした先、微かな影が降って湧いた。 落ちてくる。 認識した時にはもう事後だった。 天井を覆うステンドグラスは、何かの衝撃で粉々に砕け散っていた。 特有の甲高い悲鳴を生み出し、ダイヤモンドダストの如く煌々と破片が舞う。 階下のテイラーも訳が分からず、落下物から庇う様に頭を抱えていた。 「God, you suck at Hide-and-seek(クソな隠れんぼだ)」 ステンドグラスを破壊した侵入者が、シャンデリアの上へ降り立つ。 「…Do you want to use my NVD?(暗視装置を貸そうか?)」 虚を突かれていた連中も、慌てて鼠の始末へ走った。 然れど相手は何コンマも速い。 獲物を構えた人間から、次々と情け容赦なくAR弾へ吹き飛ばされていた。

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