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episode.8-16
「よう、遥」
テイラーを遮った侵入者…本郷は、銃は降ろさぬまま口を開いた。
「コイツが首謀者で間違いないんだな?」
指しているのは察するに本部襲撃の件だ。
どうして其処まで事情を知っているのか、呆れた神崎が返答を考える。
「しゅ、首謀者…?」
その間に割り込んだのはテイラーだった。
蒼白で震えながらも、未だ不敵な目つきはそのまま。
「何の事を話しているのかね?バート…お父さんを、殺したのも私じゃない…」
そして此処へ来てすっとぼける。
往生際の悪い性質へ、確実に狙うべく本郷が斬鉄を起こしていた。
「君達は、本当に…あらぬ容疑で私の事を…」
神崎は動かない。
彼の背後からは、徐々にもう一人の足音が迫っている。
硬質なブーツが床を叩く音。
既に主の逃亡で収束した戦場から、寝屋川が近付いてきていた。
「…何、心配するな。そういう輩は死にかければ吐く」
特有の掠れた声が、一層無慈悲に響く。
「一発当てればいいが、生憎コイツは“フルメタル・ジャケット ”でな」
軍人の弾は表面が被甲されており、凡そ至近距離では突き抜ける。
警官や民間人に許されたホローポイント弾の方が、余程人体に食い込み苦しませるという訳だ。
その“一発”を所望された本郷は、じっと男へ狙いを定めた。
確かに小心そうな面だ。
ただ何故か怯える彼を睨んでいる内、例の鈍痛が左目を襲っていた。
(…何だ、ドナーの念か?)
矢張りこの男が犯人だ、その訴えにしか思えない。
相次ぐオカルトに気味は悪いが、トリガーの指には益々力が篭っていた。
(そうだ、いつもの残像と重なる)
角膜へ焼き付いていたのは、テイラー本人で間違いなかった。
ところが確信した矢先、今度は謎の少年が視界へちらついていた。
霞がかって良くは見えない。
然れど特徴的な赤い髪、黒い外套、やけに見覚えのある容貌へ戦慄する。
此方をじっと見返し、彼は瞬く間に去った。
超常現象の内容へ、本郷は呆然とその場に佇んでいた。
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