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episode.9-11
「…何か一言くらい話してあげなよ」
「何を」
「何でも」
大人は肩を竦めた。
この上言葉まで要求するのかと神崎は呆れ、別な話題で誤魔化す事にした。
「そう言えば彼の容態は、どうだ」
彼とは、御坂に預けたジェームズ・ミンゲラを指す。
戸和の了承を得て、青年の未来はこの研究者に託されたのだ。
「未だ寝てるよ」
「起きそうか」
「君の件で、時に学問で解明出来ない珍事もあると知ったからね」
1人でも待つ人間が居るのなら。
御坂は言われずとも、他を放って全力を尽くす積もりだろう。
「和泉君に何時でも来るよう伝えておいて」
「ああ」
また間が空いた。
せっかくこの場に引き連れて来たというのに、この話で終いになりそうだった。
案の定、墓前から一歩退く神崎を。
未だ引き留めようと試み、御坂は口を開いていた。
「パトリシアは元気?」
「何だよ急に」
事情を知らない神崎が怪訝な顔をした。
「言い忘れてたけどごめん、あれバートから君へのプレゼントだったんだ」
「…はあ?」
途端に眉根を寄せる。
おや。御坂は意表を突かれて動きを止めた。
よもや彼が父親の話題に関して、表情を崩す瞬間を初めて見た。
「返す」
「良いじゃない懐いてるんだから。何をそんなに嫌がってるの」
「要らないだろ」
「君の誕生日だからって必死に考えてたのに」
「要らない」
「何でさ」
「要らん」
頑なに突っぱねる。
御坂は一寸その目と見つめ合い、唐突に腰を折って吹き出した。
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