12 / 156

☆11

『あ、いた。大和~。』 『なんだよ。』 思考を中断され、不機嫌に答える。 『ふっふっふ。じゃーん!』 俺の不機嫌さなど気にもしない母親は、 勝ち誇った顔でエコバックから取り出した 物を俺の目の前に突きつけてきた。 『買ったわよー。スモークサーモンと クリームチーズ!』 『あー・・・・そう。』 朝、俺が言ったこと気にしてたんだ。 『なに、その うっすい リアクション!』 『あぁ・・・それ、もういいや。』 『はっ?なんでよ?』 『母さんが食べてよ。』 『えぇぇーっ?』 『俺、このパン食べるからさ。』 『あら。美味しそう・・・ね』 『あーっ!!』 俺には負けるけれど、パン好きである母親は 目にも止まらぬ早業で、あんパンをかっさらい すかさず口に放り込んだ。 『あら、美味しいっ!あんこが美味しいわ・・っ!』 『ちょ・・・っ、なに勝手に食ってんだよっ!』 俺、まだ食べてないのにっ!! 全部 食われてたまるかっ!と、 半分になったあんパンを奪い返して   口に入れる。 ったく、油断も隙もない・・・。 『ん!・・・うまーい!』 『ね?あんこが違うわよね。』 『うん!』 『また、いいお店を見つけたのね~。』 『ああ、孝之介に教えてもらった。』 『あら、孝ちゃん!また連れてきてよ~。』 『あー、はいはい。』 なんでか孝之介がお気に入りなんだよな。 母さんは・・・・。 ・・・・・・・。 ・・・・・・・・孝・・・之介 はっ! また、思考が変な方向にいきそうな予感・・・! やめやめ! 考えるな、俺! 宿題! 宿題でもしよう! と、頭を切り替え 残り3つになったパンを 急いで袋に戻し、 部屋に戻った。

ともだちにシェアしよう!