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☆29

***** 佑真・side ***** よし、行くぞ! 大きく1歩 踏み出そうとした その時。 『あ。待って?』 『へ・・・?わっ・・・!』 突然、孝之介が ガシッと 腕を掴んだ。 『待ってて、ここで。』 『・・・え?なんで?』 『俺が蓮を呼びに行ってくる。』 『は?・・・なんで?』 呼びに行くより、 俺が行った方が早いと思うんだけど。 それとも なにか考えがある・・・とか? 『なんか あんの?』 そう聞いてみたけど、 孝之介は答える事なく にっこり笑うと 俺を置いて さっさと ドアに向かって 歩き出してしまった。 ん? なんだ? 今の顔・・・・・なんか・・・ 『・・・こ、孝之介・・・!』 言い知れぬ 不穏な空気を感じて 思わず 呼び止める。 けれど、 振り向いた孝之介の その顔は・・・ さっき俺を慰めてくれた 穏やかで 優しいものだった。 『なぁに?佑真。』 あ、あれ? さっきのって・・・俺の見間違い? なんとなく笑顔が怖かったような 気がしたんだけど・・・・。 なんだ、気のせいか。 『あ、あの・・じゃあ、よろしく・・・』 『うん。』 ・・・・よし。 蓮は 孝之介に任せる事にして。 孝之介が 蓮を 連れてきてくれるまで ちょっと 気持ちの整理をしておこう。 俺は、フェンス越しに空を見上げ ゆっくりと深呼吸を繰り返す。 バタン。 背中で 屋上のドアが閉まる音がした。 そのドアの向こうで 『・・・ふふ。待ってろ、蓮。』 孝之介が黒い笑みを浮かべていた事を 俺は知るよしもなかった。

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