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*** 大和・side *** 『無くなった・・・・って?』 父親に聞くと、詳しくは知らなかった みたいで 黙って首を横に振った。 『ああ。そりゃ、ウチの事だ。』 お義父さんが、カラッとした口調で 割って入ってきた。 『え?』 『この饅頭は、先代の・・親父の味だ。 俺はパンが好きだけど、この味だけは 受け継いでいこうと思ってるから こうして、大事な時には作るんだよ。』 暗くならないようにだろう、 明るく明るく お義父さんは続ける。 『・・・・・・・・・・・・・。』 気になって、ちらりと圭を見ると、 圭は俯いて、ギュッと目を閉じていた。 大丈夫かな? 『ああ!・・・・それで。 あんこが美味しいと思ったんですよ。』 母親が、屈託なく笑いながら饅頭を 頬張る。 『あー、やっぱり美味しい~♪』 場の雰囲気が いくらか和んだ。 この人は、空気を読むタイプではないから、 意図してやった訳ではないだろうけど・・・・・ 今回は、助かった。 『僕も、作りたい。 おじいちゃんの味・・・』 圭が顔を上げて お義父さんを見る。 お義父さんは 嬉しそうに頷いて見せた。 『そうだな。 でも・・・まだまだ これから覚える事は たくさんあるからな。あんこはそれからだ。』 『うん・・・頑張る。』 俺も・・・・・と心の中で呟いて・・・・、 饅頭を まるまる1個、口に放り込んだ。 うん、美味い。 これが圭の “ おじいちゃんの味 ” 美味い。

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