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知らなかった。 彼がこんなにもメルヘンボーイだなんて。 痛いわァ、痛すぎるわぁ。 そこらへんの女に売ったらコイツモテなくなるかもしれない。 んで?俺を実験台に?何の茶番だよw 「おう、緒方。冗談はここまでにして勉強しよーぜ」 「は?お前なに勉強したがってんだよ。真面目かよ」 俺、根は真面目ボーイ。お前ほどじゃないけどな。 「うん、だって無理っしょ。テレビのなんてヤラセよ。信じるとかピュアかよ。うん、お前マジ痛いわ。やめよやめよ」 一通り催眠術の存在を否定すると、緒方はあからさまに不機嫌そうな顔を見せる。 「あのさぁ...、お前にしか頼めないんだけど」 緒方は俺の顔をのぞき込むようにして机に身を乗り出した。 彼の目に人工色をした俺の金髪が映る。そろそろ染めないと。 「だからさぁ、ないってばそんなの。」 拒否し続ける俺。 「正直催眠術がほんっとーに使えたとしても、実験台とか何されるかわかんねーし嫌!」 正論だった。 緒方は何も言い返せないまま俯いて悩んでいるようだ。 勝ち誇った気分だった。 第一、催眠術だなんて怪しい。胡散臭い。ダメダメ、そんなの。小学生じゃあるまいし俺が釣れるわけないじゃん。 リュックから単語帳を取り出す。 1つ目の英単語に赤シートをかぶせた瞬間だった。 緒方がゆっくりと顔を上げる。 「合コン、1席確保」 「うはっ」 ...さっすが緒方じゃん...。 俺の釣り方まで把握済みってか。

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