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その感覚が走ったのは一瞬であった。
一瞬であったのにも関わらず脳に甘い余韻を残す。
なにかがおかしい。
緒方の口内は暖かく、俺の指を唾液が舌が、ぬるぬると絡めとる。
俺の指は、彼の舌の裏、歯の裏側などいろんなところに触れた。その度にビリビリと、今までとは違う電流のようなものが体を走る。
「ちょ、ほんとやめよ...。なんかおかしいって。きもちわる...」
彼は目だけを俺の方を見上げた。そして
「ひぅっ?!」
じゅ、と。俺の指を唾液と共に啜り上げたのだ。
女みたいな、甲高い声が俺から発せられた。まるで俺じゃないみたいな、ほんとに高くて、甘い声。
その声が耳の奥で神経を蕩かす。
俺から高い声が発せられてから数秒経った。
緒方は俺の指から口を離し、いかにも嬉しそうにニタァと笑った。
「効いてきたみたい。よかった」
効いてきた?これが催眠なのか?
彼は催眠の確認をすると再び俺の指を口に含む。じゅ、じゅ、と先程よりも激しく指を吸い上げ始めた。
「あっ、待...、ふっ...ん!」
俺の脳は完全に催眠に冒されていた。指への刺激は全て下腹部へと伝わる。指に神経が集中されているはずなのに、神経は全て下腹部に注がれていた。
指が性感帯になったとかそんな感覚ではなく、まるで、本当に指があそこになったみたいな...。
こんなのおかしい。
催眠術だなんて、絶対冗談だと思ってたから今自分の体に起こっていることが受け止められなかった。
しかし“男”である俺の体は素直にも反応してしまう。熱が、下腹部に集まる。
「イイでしょ、これ」
緒方があの、黒い笑顔で俺に聞いた。口端から垂れる唾液を拭いながら。
俺はふるふると首を振る。
彼はむっと眉間にしわを寄せた。しかしすぐまたあの笑顔に戻って
「嘘つき」
「!?ぁああっ」
彼が吸ったのは指先。
今までで1番強い刺激だった。どうやら1番敏感な部分であるらしい。
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