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「なーにお前、俺に“指”舐められただけでイキそうになってんの?」
緒方のその声で脳の甘い痺れが突然無くなる。それと共に襲いかかる倦怠感。まるで体が鉛になったように重い。
どういうことだ!?
脳の痺れは無くなったものの、下腹部の熱は治まっておらず、張り詰めたままだ。イキ損ねたんだ。
「!?...緒方!?」
「解いてあげたんだよ。催眠。」
彼はそう言って状況を把握していない俺から離れた。そして何事もなかっようにカッターシャツを伸ばし、俺から少し離れた場所に座った
「寸止め、ってヤツ。後は自分で何とかしなよ」
まだ下腹部に残る熱。正直辛い。
あのままイかせてくれればよかったのに、こいつはわざと俺をイかせなかった。
ありえない、ありえない、ありえない!
羞恥心と憤怒が俺の顔を赤くする。涙まで零れそうになる。こんなところで泣くなんてたまったもんじゃない!
部屋に出していた荷物を全てリュックに押し込む。単語帳は折れ、スマホはゴンッとリュックの底へと叩きつけられた。
こんな場所、早く出ていってやりたかった。
「お前...ばっかじゃねえの!?」
そう言い残し荒っぽく部屋のドアを開け出ていく。そして足早に彼の家から出て家に帰った。
熱はまだ体に残ったたままで、前屈みになりながら自転車を走らせた。体がだるいことなんてどうでもよかった。
こもった熱は家に帰ってから自分の部屋で抜いた。ひとりで抜いた。
なんとも虚しく生暖かい白濁だけが俺の右手を汚した。
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