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緒方がゆっくりと席から立ち上がる。
やっとだ。やっと元の関係に戻れる。待ち侘びた瞬間だった。
「ごめんな」と気恥しそうに謝る緒方。「いいって!気にしてねーし!」笑いかける俺。
「ごめんね」から「いいよ」までの工程が俺の頭の中に綺麗に描かれた。
しかし、当本人の緒方は荷物をまとめて教室から出て行ってしまった。
絶 望 感
アイツは昨日のことを悪いと思ってないのか!?最悪だな!!?
机の上につっぷす。もうなんの気力も起きない。
よし、このまま暫く寝よう。そう思って目を閉じた時だった。
「ねえ、一緒に勉強しない?」
それは緒方の声ではなかった、が聞き慣れた女子の声。
重たい頭を持ち上げると、そこにいたのは髪をひとつのおさげにした女。幼なじみの林美紅(はやし みく)だった。
「べーんきょ!しようよ!」
林は俺の机を両手で軽く叩く仕草をした。
「ん?あー...」
俺をまっすぐ見つめてくる林。そんな彼女を無視して頬杖をついて窓の外の景色を見つめる。
なんというか、今は林となるべく喋りたくなかった。
林と緒方は付き合っているのだ。
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