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林は中学生の頃からずっと緒方が好きだった。中2の頃、彼女から告白してやっと結ばれたのだ。
少しドジで、包容感があって(自称)、圧倒的癒し系(自称)の彼女は緒方からとても可愛がられたし、長く続いているようだ。リア充こわいわ。
「や、俺いーわ。あんま気がのらねえ」
「えー?どうせ帰ってもやらないくせに」
大当たり。
「や、そうだけど。アレだろ?林がいるってことは緒方がいるんだろ?」
「うん!」
林は少し頬を赤く染めて嬉しそうに頷いた。
うわ、リア充こわいわ。そうしみじみと感じながらも誘いを断る言葉を探す。
「俺昨日のアイツと喧嘩(?)しちゃってさー、会いにくいんだわ。だからパス」
「え?なんで?嘘でしょ?」
「は?嘘なんかついてどうすんだよ」
「だって千春がハヤテを呼んで来いって言ったんだもん」
「緒方が?」
予想外の展開。アイツ何考えてんだ?
「そうだよ、だから誘いに来たのに。来ないんだね?」
林はそそくさと俺の机から離れて教室から出ていこうとする。
「ちょ、おい、待てよ!」
林を呼び止める。勢いよく席から立ち上がったのでガタンと大きな音がし、林だけでなく教室にいる何人かの生徒がこちらを振り返った。
「やっぱ俺も行く」
緒方が呼んでいるというなら話は別だ。本当に、ほんっとうに可能性は低いが呼び出して謝ってくれるのかもしれない。
「そうこなくっちゃねぇ!」
林は俺の腕を引っ張って図書館に連れていこうとする。
髪がなびく彼女の後ろ姿。緒方の家と同じカモミールの香の匂いがした。
本当に仲のいいカップルなんだと思った。
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