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これはまずい。
俺の本能が自身に語りかける。人前で催眠にかけられ、弄られるだなんてたまったもんじゃない。
第一人前っていうことがリスクがでかすぎる。一言でも変な声を上げてみろ、痴態を晒すことになる。何か変な動きを見せてみろ、変態扱いされる。
催眠術なんか言っても女子は信じてくれないに決まってるし、犯人が緒方だとか言ったら次の日から軽蔑してくるだろう。
とりあえず反応してしまえばそこまでなのだ。緒方の目には「面白い」としか映らないのだから。
なるべく体を小さくちぢ込め、俯く。誰にも顔が見えないように、声が聞こえないように。戦闘態勢だった。
そして自分に言い聞かせる。
緒方はボールペンを触っているだけ、ボールペンを触っているだけ。
緒方はペン先にふっと息を吹きかけた。
ビクッと俺の肩が震える。
緒方はそれを確認すると、インクの入った芯を擦り始めた。
緒方はボールペンを根元から人差し指と親指で、扱くようにゆっくりと優しく擦った。
ピリピリとした電流が俺の体を走り抜ける。
摩擦熱でインクを溶かしてボールペンを復活させることなんてよくやることなのに、今の俺の状況からすればただの地獄だった。
全てが鮮明に自身に伝わった。彼の親指の腹の感触、手の温度、時々当たる切っていないであろう長い爪の感触まで。
「ーーーーッ!」
ギッ
椅子が後ろに下がって床が音を上げる。
腰が、揺れる。
声はかろうじておさえたが、我慢は長くは持ちそうにない。
俺の下腹部はインクの芯と共に確実に熱を持ち始めていた。
緒方はインクの芯を温めながらも確実に俺のイイ場所を擦り続けた。ある1点に血が巡るのを感じた。
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