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緒方はボールペンを擦るスピードを上げた。
快楽の波がせり上がる。
我慢していた声は、呼吸と共に鼻から抜けるような音へと変化した。
「ンッ...、ふぅっ!」
しまった、声がでかく...
「ハヤテ、どうしたの?お腹痛いの?」
体をちぢ込め、俯く俺を心配したのか林が声をかけてくる。
俯いたまま話すのは、余計な心配をかけそうだから、やっとの思いで顔を少しだけ上げる。
「や、大丈...」
「わっ!?ハヤテすごい顔赤いじゃん!熱!?」
やばい。キツいところに気づかれた。
「は...、そういえば今朝からちょっと、熱っぽいかな...」
途切れ途切れ、返事をする。怪しまれていないだろうか。そんな気持ちでいっぱいだった。
...よかった。女3人は本気で俺を心配しているようだ。「大丈夫?」やら「保健室行く?」やら声をかけてくる。俺はその気遣いを全て掌で振り払った。
「大丈夫か?ハヤテ」
声をかけてきたのは緒方。
うわー、白々しい。白々しいよコイツ!!
「...は、だ、れのせいだと」
彼にだけ聞こえるような小さな声で言う。睨んでやろうと彼の方を見た時だった。
彼がボールペンの先端に手をかけるのが見えた。
「あ」
ほんとに今はやめ...
「ひぎッ」
緒方はボールペンのボールを指でクリクリといじった。インクはまだ溶けきっていないらしく色は出ず、キュルキュルと小さく悲鳴を上げる。
脳が勝手に快楽を追い続ける。俺はその行為に夢中になった。
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