18 / 36

18*

緒方はボールペンを擦るスピードを上げた。 快楽の波がせり上がる。 我慢していた声は、呼吸と共に鼻から抜けるような音へと変化した。 「ンッ...、ふぅっ!」 しまった、声がでかく... 「ハヤテ、どうしたの?お腹痛いの?」 体をちぢ込め、俯く俺を心配したのか林が声をかけてくる。 俯いたまま話すのは、余計な心配をかけそうだから、やっとの思いで顔を少しだけ上げる。 「や、大丈...」 「わっ!?ハヤテすごい顔赤いじゃん!熱!?」 やばい。キツいところに気づかれた。 「は...、そういえば今朝からちょっと、熱っぽいかな...」 途切れ途切れ、返事をする。怪しまれていないだろうか。そんな気持ちでいっぱいだった。 ...よかった。女3人は本気で俺を心配しているようだ。「大丈夫?」やら「保健室行く?」やら声をかけてくる。俺はその気遣いを全て掌で振り払った。 「大丈夫か?ハヤテ」 声をかけてきたのは緒方。 うわー、白々しい。白々しいよコイツ!! 「...は、だ、れのせいだと」 彼にだけ聞こえるような小さな声で言う。睨んでやろうと彼の方を見た時だった。 彼がボールペンの先端に手をかけるのが見えた。 「あ」 ほんとに今はやめ... 「ひぎッ」 緒方はボールペンのボールを指でクリクリといじった。インクはまだ溶けきっていないらしく色は出ず、キュルキュルと小さく悲鳴を上げる。 脳が勝手に快楽を追い続ける。俺はその行為に夢中になった。

ともだちにシェアしよう!