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声はあからさまに大きくなった。女子には普通に聞こえているだろう。静かな図書館ではもしかすると部屋の隅の方まで聞こえているかもしれない。 でも声を出さずにはいられなかった。 「はぁっ、ぁ、ぁ」 「ハヤテ、そんなにヤバイなら保健室行こ?」 林が寄ってきて、俺の肩に触れようとする。 「さ、わんなよ!!」 出る限りの声を上げた。その声はか細く、震えていたが意思は彼女に伝わったようだ。 「ごめん」と小さく謝る声が聞こえる。 保健室に行きたい、なによりもこの場から離れたいのはやまやまだった。しかし今移動しようとすると腰が抜けて立てなくなるのは確実であった。 つまりこの快感をやり過ごすしかない。 「はぐっ」 大袈裟に肩を震わしてひとつ大きな波をやり過ごした。 「お前、ちょ、うしにのんなよ」 震える手で緒方の腕に手を伸ばす。そして的確に、ボールペンを持つ手に食らいついた。 「...ふーん」 彼は俺の必死そうな顔を見下して口端をつりあげる。いとも簡単に、俺の手を振り払ってしまった。 俺はベタっと机に広がる状態になる。 「さて、もうちょい...かなぁ」 そんなことを言いながら、彼は今までより速いスピードで芯を扱き始めた。 チカッチカッと目の前に星が舞う。 「ァッ!?ちょ、ほんと、やめ」 はくはくと、陸に打ち上げられたような魚のような息をする。 「こっ、こわれちゃ.........!」 「なにが?」 首をかしげていやらしく笑いかける緒方。 「おれのっ、ボールペンッ!」 「はい、そろそろかなぁ」 ゴリっと、俺のボールペンの先端は参考書の紙をえぐった。彼の筆圧で、ボールペンは紙に跡を付ける。 「は、ぁ、ぁ!」 「お、出た!」 黒インクは最初は途切れ途切れ出ていたものの、紙に何度か円を描いていると滑らかに出るようになった。 「はい“ハヤテのボールペン”、ありがとうね」 そう言って緒方は俺の目の前にボールペンを置いた。 俺はと言うと、一瞬目の前が真っ白になって、下腹部の熱が一気に上昇してきたと思ったら一瞬のうちに弾けた。じんわりと濡れた、気持ち悪い感覚が股間部を中心に広がる。 その後は催眠術が解けた後の、凄まじい倦怠感に襲われた。瞼が重く、重量に従って目を閉じる。 その後は何も憶えていない。

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