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やけに体がふわふわしている。頭もぼーっとする。
俺、何してたんだっけ。
手を動かすと柔らかい布の感触が、指と指の間まで伝わった。どうやら保健室のベッドの上に横になっているようだ。
なんでこんなところに。
周りを見ようと首の角度を変えた。布と金髪が擦れ合い、横髪を留めていた赤いヘアピンが地肌を刺激する。
目を開ける。と、そこには見覚えのあるシルエット。
「?緒方...」
急に意識がはっきりした。今までのこと、今までの感覚が全て体に戻ってくる。
そうだ。俺は彼に人前で実験台にされてーー。
カッと頭に血が上る。俺はベッドから勢い良く飛び起きた。こんなヤツと同じ空間になんかにいれるかよ!
「あれ?ハヤテ起きたの」
彼がいきなり起き上がった俺に声をかける。しかし俺はそれを無視した。
「ごめんな、やっぱ2日連続はキツイよな」
...うるさいな。
「でもお前、ほんと素質あるよ」
うるさいなぁ。
「俺もお前があんなに反応するとは思わなくて...」
「うるさいなあ!!!」
大声で、緒方に向かって怒鳴っていた。
「人の気持ちも知らないで何が実験台だよ、ふざけんな!!」
緒方は少し驚いたように目を見開いた。でもすぐ真顔に戻り、俺の怒鳴り声に耳を傾ける。
「気持ち悪いんだよ!!触り方も!催眠だって!お前もさぁ!!」
怖い。これ以上言ってしまうのが怖い。でも止められない。俺の口からどんどん溢れ出す怒りと不安。声が震える。
彼は怒鳴り散らす俺を静かに見て、聞いていてくれた。その目はまあまりにもまっすぐで、言わなくても心を見透かされているようで。
俺はとても惨めな気持ちになった。
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