23 / 36
23
顔を上げる。そこには緒方の本当に辛そうな顔。見ているこっちが泣きそうになる。
違う。俺、そんなつもりじゃなかった。
「無理させてごめん」
そう言って彼は保健室から出ていこうとした。スライド式のドアに手をかける。
「ま、待てよ」
彼を呼び止めた。なんで呼び止めたか、何を言うかとかわからない。勝手に口が動き出す。
彼は止まったが、こちらを振り返ろうとしない。
「俺さ、そういうつもりじゃなくて、お前と友達でいたくて...」
もごもごと口ごもる。自分でももどかしい。
「...俺とお前、友達...だよな?」
変なことを訊いてしまったと思った。
でも、「うん、そうだよ」という肯定の言葉を待つ自分がいた。
彼はゆっくりとこちらを振り返る。笑いもしなければ、目を合わせようともしなかった。
「ごめん、俺そう思ってないわ」
彼はそう言い残して保健室から出ていった。
胸にぽっかりと穴があいたような虚無感。俺は何も言葉を発せなかった。
そして、ひどく汚れた自分に気づいて独り寂しく苦笑するのだった。
ともだちにシェアしよう!