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顔を上げる。そこには緒方の本当に辛そうな顔。見ているこっちが泣きそうになる。 違う。俺、そんなつもりじゃなかった。 「無理させてごめん」 そう言って彼は保健室から出ていこうとした。スライド式のドアに手をかける。 「ま、待てよ」 彼を呼び止めた。なんで呼び止めたか、何を言うかとかわからない。勝手に口が動き出す。 彼は止まったが、こちらを振り返ろうとしない。 「俺さ、そういうつもりじゃなくて、お前と友達でいたくて...」 もごもごと口ごもる。自分でももどかしい。 「...俺とお前、友達...だよな?」 変なことを訊いてしまったと思った。 でも、「うん、そうだよ」という肯定の言葉を待つ自分がいた。 彼はゆっくりとこちらを振り返る。笑いもしなければ、目を合わせようともしなかった。 「ごめん、俺そう思ってないわ」 彼はそう言い残して保健室から出ていった。 胸にぽっかりと穴があいたような虚無感。俺は何も言葉を発せなかった。 そして、ひどく汚れた自分に気づいて独り寂しく苦笑するのだった。

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