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外の空気を吸い、少し落ち着いた。あとは気合でどうにかなりそうだ。 「い、今城さん...」 花小路が小さなグラスに水を入れて持ってきてくれた。俺はそれを礼を言って受け取る。彼女はストンと俺の横に腰を下ろした。 水を飲んでいると、彼女が俺の顔をのぞき込んできた。 「...よかった。顔色、良くなってきましたね」 彼女はそう言ってにっこりと笑った。ダメだ、なんだか直視できない。 「...それより、いいの?あっち行かなくて...」 ガラスの扉を隔てたカフェの内側、その賑やかそうな空間を指さす。合コンは俺ら抜きで続行してるらしい。 彼女は小さく頷いて、眉を下げた。 「ええ、私こういうの初めてで...。なんだか始まった時から苦手だなって思っちゃって...」 花小路はおろおろと言葉を選びながら喋る。 「そう、だから...できればここにいたいんです」 彼女はそう言って少し顔を赤くした。つられて俺も赤くなる。 「そ、そう...」 にやけていないだろうか、慌てて口元を押さえる。 それからずっと2人でテラスで話した。お互いの学校のこととか、部活だとか(俺はほとんど行ってないけど)、ほんとにどうでもいいこと。しかし俺らは確実に距離を縮めていた。お開きの時には連絡先を交換し合い、その後も話し続けた。 出会って何日しか経っていない。本当に軽率だと思う。でも、なにより嬉しかった。 『私で良ければ...、お付き合いできませんか?』 そんなメッセージに俺は『喜んで』と返していた。 俺らはお互い「今城さん」「花小路さん」と律儀にも上の名前で呼びあった。 別に女の子と付き合ったのは初めてじゃない。だらか緊張しているわけではなかったが、花小路さんが初めてだそうなので、俺は彼女に合わせようと思ったのだ。 付き合うって言っても、恋人らしいことは何もしなかった。ただ前より連絡を取ることが多くなって、彼女のことをよく知ったくらい。あ、でも一緒には帰るようになったかな。 彼女と一緒に帰るようになったぶん、ヤンチャな友達との付き合いが悪くなった。そのため、そいつらにはすぐバレた。「どこまでやったんだよ」「お盛んだね」とからかわれたりしたけど、本当にやましいことはやっていない。 綺麗な彼女を汚したくなかった。 学校帰り、彼女を学校に迎えに行くのは俺だった。彼女は「申し訳ない」と断ったが俺が「迎えに行きたい」と引き受けた。あんまり、彼女ができたことは人に知られたくなかった、というか緒方に。 彼に知られる時間が、遅ければ遅いほど良かった。いずれ知られるだろうけど。 今は彼女の懐かしいカモミールの香りに包まれることが幸せだった。

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