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付き合ってから2週間目の日曜日、俺は花小路さんから買い物に誘われた。 俺は今回も珍しく、日曜日の部活に参加するつもりだった。しかし彼女に誘われたからには話は別だ。優先順位がはっきりしている。 買い物デート。そんな言葉が頭に浮かぶ。 今回は制服で会うのではない。俺は俺なりに、1番マシな服装で家を出た。 待ち合わせ場所は合コンをしたカフェレストランが前にある駅。と、言っても自分たちの住んでいる町は狭く、大きな街に行く為の駅はここしかないのだけど。 改札で待っていると、待ち合わせ時間が5分くらい過ぎたくらいに、ふわふわと髪を揺らして彼女が走ってきた。 「ごめんなさい、私...、異性と出かけるの初めてで、何着てけばいいか...わからなくて...」 彼女は息を切らせながら申し訳なさそうに言った。5分くらい大したことないのに。 そういう花小路さんの服装はシックなブラウスにプリーツスカート。上下色を合わせており、ブラウスには黒いリボンがついている。足元は黒タイツに黒パンプスでレディを決めていた。 清楚な彼女に良く似合うと思った。 この服を、自分のために選んできてくれたのかとちょっとした優越感に浸った。 それから2人は電車に乗った。休日ということで、街に出るであろう私服姿の学生やカップルが乗っていた。そのカップルというひとくくりの中に俺らも含まれている。なんだかこそばゆい感覚がした。 花小路さんと付き合いだしてから右手の痛みは人差し指と中指の腹に集中した。それを紛らわすため指の腹に爪で跡をつける。それが癖になってしまっていた。 そのため指の腹には指紋以外に幾筋もの線が入った。酷い時にはふつふつと皮がめくれあがる。 その様子を前、木乃に見られた時 「うわ、お前水虫かよ。水虫リア充マジこえー」 などと意味のわからない事を言われた。それから俺はなるべく右手を見られないようにしている。 花小路さんの視界に入らないところで、俺は密かに自分の指を傷つけた。 電車を降りて行ったのは外来商品などを売っている店。彼女がよく行くらしい。お菓子や生活雑貨まで幅広いものが置いてある。外来品ということで、少しばかりお高いが。 自分の好きなものは1人でゆっくり見たいだろう。俺は彼女と離れ、ふらふらと文房具やらのブースを見て歩いた。

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