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第7話

それから俺はこの月下城を、浮遊城にして出現ポイントを決めて世界を巡らせる事にした。 同じ所に留まっていては魔王を思い出す。更に魔王と弟を思い出し、二人を見に行ってしまいそうだからだ。 そして人間界と"友好的"な繋がりを保つ為に、月に一度だけ人間界と売買をする事になった。 王族指定の商人が相手だ。商人は男で、背が俺より高く、物腰は柔らか。そして、何とも男の色気が漂う美丈夫だった。 ……少々、お喋り好きではあるが。 そう。彼は毎回、俺と商売以外の短い会話を必ずするのだ。 「なぜこの城には貴方様以外はスケルトンのみなのですか?」 「……"生きる"者は煩わしい。だからだ。……今回も朝陽が差し、城が移動する前にこの城から立ち去れ」 「…………」 「……分かったな」 何とも……言えない会話だ。 他愛ない様な、俺を抉る様な……商人の質問。 会話内容を全て覚えている訳ではないが、ある日こんな質問を受けた。 ―……"「貴方は元は"人間"で、無理矢理"魔族"になったのだと……聞きました。魔王を恨んでますか?」" 俺はこの質問を受けた時、諦めと何とも言えない惨めな気持ちが広がった。 「ふふッ……。俺は"魔族"になるのを自分で選んだんだ」 「……え?」 「俺は元は"人間"だ。だが、先代の魔王に"闇堕ち"を受けたから、今は"魔族"で"魔王"だ。 だから、この城で俺が生活するのは問題無いし、出るつもりも誰かに"譲る"つもりもない」 「……」 「……それに、世界が平和なら誰が……魔王に……納まっても、良いだろ……! 俺はここから出たくないし、出れなくもあるんだ」 「…………」 「……………………悪いが、帰ってくれ」 この時、碌に彼の持参した商品を見ず、俺からの物も出さずに彼を……帰した。 そして次の月、彼は普段通り俺と商いをしに来た。まぁ、"義務"という面が強いと思うがな。 ただし、その手には…… 「今回は、個人的にお土産を持って来ました」 「そ、そのショコラは……!」 俺の大好物の……!! 「はい、王都で大人気だそうで。魔王様、人間界の嗜好品もなかなかですよ?」 「……そ、そうだな。嗜好品は心を豊かにする。そうだ、茶でも……飲んでいくか?」 前回の侘びを含んだ代物だろうか。 俺も……彼に悪い事をした。今回は茶でも出そう。 「はい、頂きます。魔王様と同じ空間で時を共に出来る事、大変嬉しく思います」 「……? お前、魔王相手にそんな事を言うなんて変わってるな……」 「そうでしょうか?」 ああ、それにしてもショコラに顔がニヤける。大好きなのだが、本当に食べるのは久々なのだ。 「俺は今、このショコラで気分が良い。土産の礼は何が良い? 出来る限り聞こう」 「…………その仮面を外して下さい……素顔の貴方様が見てみたい」 「……それは出来ない。……その願いは聞かない」 「では、なぜ、仮面を……?」 「俺は、自分の顔が嫌いだからだよ。こうしていれば、自分でも見なくて済む」 「…………」 「…………お前への礼は悪いが他の物を……俺が選んで渡そう。少し待ってろ」 「…………はい……」

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