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第8話

部屋を出る時、後方から深い溜息が聞こえた気がしたが……。 そうだ。何か役に立ちそうな物にしよう。お礼だしな! そこで俺は月下城に眠る数ある魔具の中から、手鏡を手に商人の下に戻った。 部屋に帰り、彼を映しながら手鏡の説明を始めると、そこに変化が…… 「これは"真実の鏡"、と言って真眼効果が備わっているから、商い相手の"嘘"をこれで……って、その姿は……!?」 「……ここでそれを出されるとは……想像していなかったよ、レオニール……」 「お前は……魔王!? 魔王……だったのか……」 「…………そうだ……。レイニードに言われて姿を変えて……毎月、お前に会いに来ていたんだ」 そう言いながら商人から魔王の姿に……。魔王……。 「―……は……はは、はははッ……。何だ? この城を取り返す……計画でも立てていたのか?  それとも、レイニードと関係を結ぶのに俺が邪魔で、消す機会をうかがっていたとか?」 「…………」 「……俺をこうして毎月騙すのは楽しかったか……!?」 「……スマン……。でも、そんな事考えてない。 ……単純に、お前に会いたいと……。出来たら、触れたいと……は毎回思っていた」 そう言って商人……魔王は俺に手を伸ばしてきた。 が、俺はそれを除けて後ろを向いた。 本当は払い除けたかったけど、その時に手でも取られたら敵わない。 背を向けるのは不本意だが、只でさえ……大好きな魔王の顔を、まともに見れないんだ!!!! 「……~~魔王……のバカっ……! お前なんか、もう、き、き、嫌い! そう、大ッ嫌いなんだからな! ……って、謝った!?」 「悪かった」 「……………………」(絶句) 「"嫌い"は結構、堪えるな……レオニール、嫌わないで欲しい……。俺に許しを……」 「……………………」(白目) 「俺だけのレオニール、その仮面を捨てて声を聞かせてくれないか?」 「!」 俺は彼に後ろから抱きすくめられ、仮面を外されて意識を取り戻した。抜かった……! 「れ、レイニードの所に帰れよ……! 帰れ……!!」 「仮面を外した第一声がそれとは……」 「ぅ、うるさい! うるさい! うるさい! うる……っ、ン、ん!? ん、ぁ、んんっ……」 「……ん……ふ、ンっ……」 拒絶を込めた言葉を叫んだら、身体を回転させられて口を塞がれてしまった。 く、口付け、じゃない。これは、"塞がれた"んだ! 息苦しさに自然と涙がこみ上げ、瞳が潤む。泣くもんか。俺は瞳を閉じた。 ムカつくから魔王の胸を叩いたら唇を放され、思わず「……は、……ぁ……」と息が漏れた。 そしてそのまま彼を睨め上げれば、真剣な顔で俺を見ていた。 「……レイニードと話しをしていて、俺が本当に探して求めた人物が"レオニール"だと分かった」 「…………は、あ?」 「間違えたが、間違えてなかったんだ!」 「イミガワカリマセン」 興奮気味な魔王に冷めた視線で俺は言葉を重ねた。 すると"ガッ"と肩を掴れ、指先が肉にめり込んだ。そんなに力を込めなくても……痛いじゃねーかよ! 魔王の爬虫類めいた金目が強く俺を射抜いたかと思えば、次にそれがふわりと緩んだ。 そして……俺に答えをよこした。

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