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第5話
……そして、魔王と弟のふりをして、シて過ごす日々を繰り返していたら……
「―……やっと夜間中に玉座まで来れた! さぁ、魔王!! 今夜は"レオニール"様を返して貰おう!! 殿下はどこだッ!?」
「は?」
あ。助けが来た。面倒な修羅場の予感しかしねーなぁ……。台詞を吐いたのは熱血騎士団長か。
しかもドヤドヤと何人部下を連れて来たんだ?
俺は魔王にもたれながら、視線をやって来た人物達に向けた。
悪いが、面倒臭さに半眼になってしまう。
「……そんな卑猥な薄着で何と酷いお姿に……!! お前にしな垂れかかっている麗人こそ、我等のレオニール様ではないか!!! この……変態魔王が!」
「!????」
「……兄さん……何で……」
「……………………お前も一緒に来たのか……」
あーあー……せっかく闇堕ちして魔王と毎日イチャイチャして、注意を全部俺に注がせていたのに~。
それなりに平和な世界を、俺なりに提供していたんだけどなー?
んでもさぁ?
―……悪いけど、余計な救出劇をして魔王の注意を俺から奪うの、マジやめてくんない?
「…………」
……でも、魔王の反応は予想通りだ。魔王は弟を見てショックを受けている。
「やっぱり、俺じゃ……なれなかったんだ……」
魔王としては大人しく、いつも書庫に居る弟の前に現れた。
でも、"双子"だという事は知っていたが見分けが出来ずに間違えて、俺を弟だと想い続けて……。
……今更"間違えた"事実に驚いた……。
「魔王は……最初から弟の事が……すき……? なんだな?」
「…………」
―……双子で見た目は同じ、なのに……違う。魔王は弟が好き、なんだ。だって、否定の言葉が……無い。
「……まおう……お前……いつまで"弟"を見ている気だ……? 俺は質問、しているんだが? ……答えないのは"肯定"だからか……」
「……あ! いや、その、ナンだ……!? それより、お前……今までと雰囲気が違う……」
「あぁ? 俺の雰囲気が違うのは当然だろ? 俺は"弟"じゃねぇんだからよ……!」
「お……"俺"ぇ!?」
「俺の本当の名前は"レオニール"。お前が間違えた俺の弟……"レイニード"、の……双子の兄、だ」
「…………レオニール……」
……どんな形であれ、今更俺の名前を正しく口にした魔王に心臓が甘苦く痛む。
俺は"好き"を間違えない。勘違いしない。こんな状況でも、俺は魔王が好きだ。
……俺は捕らわれたままでいいから、魔王は……俺が解放してやろう。
「……せっかくここまで来てくれたが、俺は帰れない」
「兄さん!?」
「俺は"闇堕ち"している。元の生活に俺は戻れない。だから……」
―……俺が……全部、全部、全部……ぶっ壊してやる……!!!!
「お前等、全員、この城から出て行け――!!」
「な、何で兄さんがマジ切れ!?」
「"転移"!!!」
「ま、待ってよ! 兄さん!」
「レオニール様!!」
「…………」
魔王は放心状態で、弟と団長達は足掻いていたみたいだけど、無駄。
魔族化で俺の方が"力"が数段上だからな。
みんな仲良く王城へ送っといた。後は知らん!
この月下城は手切れ金として、"魔王"の称号と共に俺が頂く!
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